884編公開中。 今を映す手鏡のように
片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』 の一覧
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2017.10.13
股関節の柔軟な歩きかた
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 秋のウイーク・デーの夜。早すぎもおそすぎもしない、とてもいい時間に、ぼくは彼女とふたりで散歩をしていた。彼女の、ほどよい高さのきれいなヒールが、歩道に心地よい音をたてていた。いっしょに散歩する女性としてぼくがまっさきに…
2017.9.30
三つのパラグラフのなかの彼女
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 ひさしぶりに彼女に会った。夏のまっさかりの日に会って以来だから、ひさしぶりなのだ。いまは、すでに秋が深い。落葉樹の葉は光合成を終わりつつあり、日没の太陽の光を、高くたなびいている絹雲が静かに照りかえしている。  真夏に…
2017.9.28
彼女と一台の自動車
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1  秋の午後、やや遅い時間。あるいは、夕方のすこし早い時間。ダイニング・ルームに客をとおす準備は、まだ終わっていない。早い時間の客は、したがって、ロビーとして使っている部屋か、バー、あるいはテラスに案内される。彼女はテ…
2017.9.27
ブラックベリーとスニーカーの靴ひも
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 東京からひとりで自動車を走らせて三時間、彼女は高原のホテルに着いた。  よく晴れた明るい秋の日の午後のなかに、静かに、ゆっくりと、夕暮れが溶けこみはじめる時間だった。荷物を持ってホテルに入り、チェック・インした。ベルボ…
2017.9.17
スーザンが育った時代(3)
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《(2)からのつづき》 10 『花と咲く』と『アイヴィの日々』を読み終わって、ぜんたいに関して静かな気持ちで丁寧に考えをめぐらせていくと、『アイヴィの日々』のいちばん最後の部分の破綻のしかたは、ぜんたいにおよんでいる端整…
2017.9.16
スーザンが育った時代(2)
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《(1)からのつづき》 7  スーザン・アレンの文章は、落ち着いた静かさをたたえた、誠実な文章だ。ことさらにドラマを作ったりすることなく、正しい遠近法を常に守りながら、ひとつひとつきめこまかく、書くべきことをその順番にし…
2017.9.15
スーザンが育った時代(1)
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1  南ダコタ、ネブラスカ、アイオワ、イリノイと続くコーン・ベルトのまんなかに、アイオワ州がある。このアイオワ州は、ぜんたいがまっ平らだと、よく言われている。わかりやすくひと言で言うなら、まっ平らかもしれない。標高がもっ…
2017.9.14
パリから一通の封書が届いた
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 もう何年もまえに東京からニューヨークへいってしまい、いまでは主としてニューヨークとパリで忙しく仕事をしているひとりの女性がいる。彼女はぼくよりも年上であり、ぼくは彼女にとって、あまり出来のよくない弟のような存在だ。彼女…
2017.9.7
銀座で夕食の約束
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 銀座で夕食の約束があった。僕と男性もうひとり、そして女性がふたりの、合計四人だ。女性たちのうちのひとりと落ち合った僕は、コーヒーを一杯だけ飲み、彼女とともに夕方の銀座を夕食の店にむかった。  歩道を歩いていて、あるとき…
2017.9.3
彼女が愛する小さなデスク
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 彼女の自宅にある仕事部屋は彼女が作った。ただの空間でしかなかったところに手を加え、工夫をこらして、作り上げた。凝ってはいないし、加工や装飾は最小限におさえてあった。したがって改造のための資金も、自分でも驚くほどに少なく…
2017.9.2
部屋を楽しんでいる人
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 いま彼女がひとりで住んでいる部屋の設計に関して、彼女はいっさい関係していない。父親とその弟が共同しておこなっている仕事をとおして、彼女が使えることになった部屋だ。住みはじめて三年になる。破格の条件で使わせてもらっている…
2017.9.1
ピアノを弾く人
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 ピアノを弾く女性が、好きだ。ひとりの女性の生き身が、ピアノというたいへんに構造的な楽器にたちむかうありさまが、いろんなかたちでぼくの興味をそそるからだ。何人もの女性の友人たちが、ピアノを非常に達者に弾きこなす。それぞれ…
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