973編公開中。 今を映す手鏡のように
片岡義男エッセイ・コレクション の一覧
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2017.9.30
三つのパラグラフのなかの彼女
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 ひさしぶりに彼女に会った。夏のまっさかりの日に会って以来だから、ひさしぶりなのだ。いまは、すでに秋が深い。落葉樹の葉は光合成を終わりつつあり、日没の太陽の光を、高くたなびいている絹雲が静かに照りかえしている。  真夏に…
2017.9.28
彼女と一台の自動車
縦書き
1  秋の午後、やや遅い時間。あるいは、夕方のすこし早い時間。ダイニング・ルームに客をとおす準備は、まだ終わっていない。早い時間の客は、したがって、ロビーとして使っている部屋か、バー、あるいはテラスに案内される。彼女はテ…
2017.9.27
ブラックベリーとスニーカーの靴ひも
縦書き
 東京からひとりで自動車を走らせて三時間、彼女は高原のホテルに着いた。  よく晴れた明るい秋の日の午後のなかに、静かに、ゆっくりと、夕暮れが溶けこみはじめる時間だった。荷物を持ってホテルに入り、チェック・インした。ベルボ…
2017.9.18
ヴァーガス・ガールという、架空の女性たち
縦書き
 ヴァーガス・ガールという、架空の美しい女性について書くことにしよう。  ヴァーガスは、VARGASとつづる。ヴァーガス・ガールとして広く知られている一連の美人画を描いた画家の名前だ。フル・ネームは、アルベルト・ヴァーガ…
2017.9.14
パリから一通の封書が届いた
縦書き
 もう何年もまえに東京からニューヨークへいってしまい、いまでは主としてニューヨークとパリで忙しく仕事をしているひとりの女性がいる。彼女はぼくよりも年上であり、ぼくは彼女にとって、あまり出来のよくない弟のような存在だ。彼女…
2017.9.7
銀座で夕食の約束
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 銀座で夕食の約束があった。僕と男性もうひとり、そして女性がふたりの、合計四人だ。女性たちのうちのひとりと落ち合った僕は、コーヒーを一杯だけ飲み、彼女とともに夕方の銀座を夕食の店にむかった。  歩道を歩いていて、あるとき…
2017.9.3
彼女が愛する小さなデスク
縦書き
 彼女の自宅にある仕事部屋は彼女が作った。ただの空間でしかなかったところに手を加え、工夫をこらして、作り上げた。凝ってはいないし、加工や装飾は最小限におさえてあった。したがって改造のための資金も、自分でも驚くほどに少なく…
2017.9.1
ピアノを弾く人
縦書き
 ピアノを弾く女性が、好きだ。ひとりの女性の生き身が、ピアノというたいへんに構造的な楽器にたちむかうありさまが、いろんなかたちでぼくの興味をそそるからだ。何人もの女性の友人たちが、ピアノを非常に達者に弾きこなす。それぞれ…
2017.7.29
LAでは笑うしかない、というLA的な態度
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『アウトレイジャス LA』というタイトルの写真集におさめてある百点のカラー写真を、ひとつひとつ、じっくりと見おわったところだ。LAに生まれてそこに育ったLAネイティヴのジャーナリスト兼写真家のロバート・ランドーが、自分の…
2017.7.26
モノクロームはニューヨークの実力
縦書き
 アンドリアス・フェイニンガーが自ら編集した写真集『一九四〇年代のニューヨーク』は、ぼくにとっては一機の非常にすぐれた出来ばえのタイム・マシーンだ。一九四〇年代という時間はとっくに過ぎ去ってもうないし、現在のニューヨーク…
2017.7.25
イースト・サイドの、暑い日の午後の消火栓
縦書き
 それほど緊急の用事でもない、という感じでパトロール・カーがくる。歩道に寄ってそのパトロール・カーはとまり、サマータイム・ユニフォームを着た中年の警官がふたり、外に出てくる。ひとりは居心地悪そうにあたりを見まわし、レンチ…
2017.7.19
デラックス・ダブル
縦書き
 ものすごく暑い日だった。かんかん照りだった。そして湿度が、限度いっぱいに高かった。暑さとかさなりあったその湿度は、具体的な重みとして、全身にのしかかってくるようだった。そんな日の、午後まだ早い時間に、ぼくは彼女と会った…
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