883編公開中。 今を映す手鏡のように
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2017.9.28
彼女と一台の自動車
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1  秋の午後、やや遅い時間。あるいは、夕方のすこし早い時間。ダイニング・ルームに客をとおす準備は、まだ終わっていない。早い時間の客は、したがって、ロビーとして使っている部屋か、バー、あるいはテラスに案内される。彼女はテ…
2017.9.21
波の上を歩いた姉
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 十五歳の夏の終わりに、姉は日本からカリフォルニアへ帰った。僕はハワイへ戻った。島はおなじだが、もとの家ではなく、新しい家だった。僕はまだ十歳になるまえだった。感謝祭が近くなった頃、姉はカリフォルニアからその家へ来た。姉…
2017.7.31
海から見る自分の居場所
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 瀬戸内の海からその港へ入っていくとき、視界に広がる景色というものを、現在の地図を見ながら僕は思い描いている。最近の地図を見ながらだから、思い描く景色は現実にかなり近いものとなっているはずだ。海に突き出た埋め立て地が、港…
2017.7.23
渡り鳥と寿司について
縦書き
 一九六一年には大学の三年生だった僕は、その年の夏を房総半島の館山で過ごした。なぜ館山だったのか、いまとなってはなにひとつわからない。当時の僕は房総半島に関しては完全に無知だったはずだ。学校の友人に教えてもらったのかもし…
2017.1.12
南の海の小さな島に誘惑されて
 地球儀の南側に横たわる巨大な海のまんなかの、小さな小さな島にひとりで到着してホテルに入り、部屋のテラスから海を見ながら僕は水を飲む。遠いところへ来たなあと、つくづく僕は思う。ジェット旅客機の定期運行システムとそれを支え…
2017.1.7
波乗りとは、最終的には、心の状態だ
 ヨーロッパ文明と接触する以前の、大昔のハワイ人たちは、文字を持っていなかった。だから、すべてのことが、喋る言葉によって、伝えられていった。  ハワイ諸島の創世伝説とか、昔のキングに関する記録のような言い伝えとか、さまざ…
2016.12.20
遠い昔の日に
 大昔のハワイでは、平民も貴族も、だいたい分けへだてなく平等にサーフィンを楽しんでいた。しかし、やはり貴族たちのほうが、有利だった。アリイと呼ばれていた酋長階級だ。平民のように直接の生産に従事せず、したがってヒマがあった…
2016.12.19
陽が沈むころ、オンボロ自動車で波乗りフィルムを見に行く
 朝は早くに起きる。五時、六時という早さだ。まやかしのない、ソリッド(内容のしっかりした)な材料でつくった朝食を、時間をかけてゆっくり、しかも、しっかりと食べる。食卓の話題は、波のことばかりだ。ラジオのニュースが、今日の…
2016.12.18
十二月のハワイは波乗りシーズンのちょうどまんなか
 スクリーン・ドアをあけて玄関のポーチのうえに出る。気持ちの良い、さらっとした風が、全身をなでる。ポーチの木の階段を、庭へ降りる。芝生のうえを裸足で歩く。芝生は、しっとりぬれている。淡いとおり雨の雲が、さあっとまいていっ…
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