972編公開中。 今を映す手鏡のように
歌謡曲 の一覧
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2020.6.30
TVの記憶をふたつ
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 当時の僕の仕事場はたいそう快適だった。東の端にあった階段を二階へ上がり、まっすぐの廊下を西へ向けて歩いていき、突き当たりにあった和室を抜けると、二十畳ほどの広さの人工芝のヴェランダだった。このヴェランダの南西の角に、温…
2020.4.21
あの道がそう言った
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白く輝く雲へ  まだ梅雨だがその日は、梅雨明けの初日のように、素晴らしい晴天だった。小田急線の上りひと駅の下北沢で井の頭線に乗り換えて渋谷へ。朝のラッシュアワーの地下鉄銀座線浅草行きのプラットフォームでは、人々が三列にな…
2017.6.24
波止場通りを左に曲がる
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 デビューしてまだ間もない頃の美空ひばりを、何点もの写真で見ることができる。多くの写真に彼女は撮られ、それはさまざまな刊行物のなかに複製されている。そのような写真を数多く見ていくと、やがてはっきりわかってくることがひとつ…
2017.6.21
好きな歌の集めかた
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 いつのまにかLPレコードがたくさんたまってしまった。何枚あるのか数えたことは一度もないが、とにかくたくさんある。たくさんあるだけではなく、いろんなジャンルに広くまたがっている。大きなレコード店へいくと、数多くのLPレコ…
2017.1.9
僕にとっての個人的なスタンダード
 いまから百年前、おそらくまだ青年の名残をとどめていた年齢の頃、僕の祖父はハワイへ渡った。僕の父親はハワイで生まれてそこで育ち、カリフォルニアその他で成長の仕上げをした。ハワイとアメリカの日系人社会が、幼い頃から僕の身辺…
2016.12.17
『東京ラプソディ』1936年(昭和11年)|2
➡︎前半|1  マキと船橋、そしてハト子の三人は、料亭へ出かけていく。蝶々を指名する。蝶々さんが座敷へ来る。あでやかに美しい、優美な芸者さんだ。やや気後れしつつも、マキは彼女と対決する。若原一郎にはこんな可…
2016.12.16
『東京ラプソディ』1936年(昭和11年)|1
 おおまかに言って銀座の西側、若い女性の足で有楽町の駅から小走りに三分ほどでいけるあたりに、若原クリーニング店という洗濯屋さんがある、という設定だ。銀座でなくては物語にならない、だからそのクリーニング店は銀座にある。そし…
2016.7.12
君はなぜ恋しいか
 歌謡曲、あるいは流行歌、どちらでもいいけれど、もの心についてから現在にいたるまで、僕はそれらとどのような接触を持っただろうか。もの心ついてから現在にいたる期間は、日本の戦後五十数年という期間そのままだ。  幼時から子供…
2016.6.15
上を向いてスキヤキ
 イギリスのパイというレーベルのレコード会社のヘッドが、商用で一九六二年の東京を訪れた。そのときちょうど大ヒットしていた坂本九の「上を向いて歩こう」を彼は聴いてたいそう気に入り、レコードを手に入れた。そしてそれを持って帰…
2016.3.8
タクシーで聴いた歌
 春まだ浅い、という言いかたがほとんどあてはまらない、冬の終りに近い温い日の夜、十時前後、僕は東京でひとりタクシーに乗って走っていた。中波のラジオがかかっていた。聴取者が葉書で歌をリクエストする短い番組がやがてはじまった…
2016.2.26
町にまだレコード店があった頃(3)
 中古のレコードを骨董市のようなところで買う体験を一度だけしてみたい、と僕はかねてより思っていた。僕はコレクターではないし、掘り出し物との遭遇に情熱を注ぐタイプでもない。だから体験は一度でいい。川越の成田山別院というお寺…
2016.2.25
町にまだレコード店があった頃(2)
 海原千里・万里のLPも残っていた。名前にひかれるところもあるが、十二曲のうち八曲までがいわゆる大阪ものであることから、僕はこのLPを買ったのだ、といま僕は推測する。大阪ものへの興味は、フランク永井に触発された。「大阪ぐ…
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