884編公開中。 今を映す手鏡のように
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2017.6.5
マグリットの絵のように
縦書き
 梅雨(つゆ)が近い。しかし今日は晴れていた。海と海岸の上に青い空が広がり、夏のような陽ざしが満ちている空間のなかを、さわやかに風が吹き渡った。  その風のなかに、今日の彼と彼女はいた。ふたりは午前中からともに仕事をして…
2016.11.27
彼女から届く絵葉書
 彼女と知り合って三か月ほどして、彼女からの最初の絵葉書が私のところに届いた。国内の旅先からであることが消印からわかった。フラミンゴの絵葉書だった。フラミンゴのひな鳥が、親鳥から口うつしで餌をもらっているところが、縦位置…
2016.9.25
正解はブラック・コーヒーの色
 昼食のあと彼はオフィスへ戻った。午後の仕事をはじめて二時間ほど経過して、デスクの外線電話が鳴った。左腕をのばして受話器を取り、書類を見ながら耳に当てた。彼女だった。  電話をかけてきた親しい人に対する最初の言葉として、…
2016.9.24
悲しき雨音
 雨が降っている。九月の終わりの、何曜日だろう。何曜日でもいい。雨の日なのに、空気はとてもさらっとしている。秋だ、さすがに。空気が、肌にとても心地よい。  雨の香りがしている。  午後だ。何時ごろだろう。何時でもいい。午…
2016.9.11
彼の後輪が滑った──8(夏)
 夏の終わり、雨のあがった午後おそく、停めておいたぼくのオートバイのすぐかたわらに、きれいな丸い水たまりが出来ていた。直径は、七メートルほどもあっただろうか。  オートバイのわきに立って、ぼくはその水たまりを見た。風が止…
2016.9.2
彼の後輪が滑った──7(夏)
 その高速国道の、そのあたりの中央分離帯は、丈が低い。オートバイだと、分離帯を 越えて反対側の車線をのぞきこむようにして走ることが出来る。  右への大きなカーヴを、ぼくは時速百キロで通過していきつつあった。反対側の車線の…
2016.8.7
避暑地
 真夏の、たいへんに暑い日曜日の午後、ひとりで都心の部屋にいた。暑い、暑い、と言っていたら、女性の友だちから電話がかかってきた。高原の避暑地で三日間を快適にすごしたいという気持はないか、と彼女はぼくにきいた。  彼女は、…
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