973編公開中。 今を映す手鏡のように
の一覧
2020.7.2
風がそこに吹いている
縦書き
1  そこにいるのは自分ひとりだけという他に人のいない状態を寂しいと言うなら、それはlonesomeだよと、英語で説明されたのは、僕が六歳くらいのときだ。この説明を聞いてlonesomeはよくわかったが、自分では使うこと…
2017.9.27
ブラックベリーとスニーカーの靴ひも
縦書き
 東京からひとりで自動車を走らせて三時間、彼女は高原のホテルに着いた。  よく晴れた明るい秋の日の午後のなかに、静かに、ゆっくりと、夕暮れが溶けこみはじめる時間だった。荷物を持ってホテルに入り、チェック・インした。ベルボ…
2017.1.28
西ヴァージニア州シェナンドア河
『ウインドソング』という題名のLPのジャケットに、ジョン・デンヴァーは次のようなみじかい言葉をよせている。 Windsong,John Denver,1975[BMG Special Products] 「友だちのみなさ…
2017.1.1
『草枕』のような旅を
 夏目漱石の『草枕』という小説を、いまになってやっと、僕は読んだ。たしかにやっとだが、読み終えてふた月ほどたついま、少なくとも僕にとっては、この小説を読むための最適な時は現在をおいて他になかった、と思っている。夏目漱石の…
2016.5.16
ある日ぼくは典型的な山村をながめに新幹線ででかけた
1  いま自分が書こうとしているこの文章とは関係なく、ぼくは、かなり以前から、日本の典型的な農村をながめてみたい、と考えていた。絵に描いたような農村のたたずまいがつくりだす景色を、実際にながめてみたいと思っていた。農村に…
2016.5.10
またたく星が、にじんでこぼれる
 五月のはじめにアメリカから友人が日本に来た。ぼくの家に泊まった初日の夜、彼はベッド・ルームのベッドの、二段になったマットレスの上段だけを居間に持って来て、ぼくは今夜はここで寝る、と言った。  居間は、かなり広い。そして…
2015.11.17
ターザンが教えてくれた
 子供のころ、ぼくはほんとうによく遊んだ。年上の少年たちといっしょに、一人前にとびまわって遊べるようになったのが、小学校1年生くらいのときだろうか。それから12歳くらいまでの全期間をとおして、ぼくは子供の遊びを徹底して遊…