884編公開中。 今を映す手鏡のように
季節 の一覧
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2017.9.30
三つのパラグラフのなかの彼女
縦書き
 ひさしぶりに彼女に会った。夏のまっさかりの日に会って以来だから、ひさしぶりなのだ。いまは、すでに秋が深い。落葉樹の葉は光合成を終わりつつあり、日没の太陽の光を、高くたなびいている絹雲が静かに照りかえしている。  真夏に…
2017.6.6
道路の小説を書きたい
縦書き
 ぼくは日本の地形と気候が好きだ。地形も気候も、ともに独特であり、このふたつが重なりあった日本は、興味がつきない。  この小さな列島は、亜寒帯から亜熱帯にまで、わざわざまたがるのを意図したかのように、細長い。複雑な海岸線…
2017.5.20
『ときには星の下で眠る』
縦書き
 一九八〇年までさかのぼると、『ときには星の下で眠る』という、中編よりやや分量の多い小説がある。高校の同級生だった親しいオートバイ仲間が、ある年の秋、高原に集まって来て再会する、という単純なストーリーだということは記憶し…
2016.11.29
京都の四季を英語で三行詩に
『キョート・ドゥエリング』は、京都に二十五年にわたって住んでいる、イーデス・シファートというアメリカ女性の作品だ。短い詩による一年、という副題のとおり、ぜんたいは一月から十二月まで、十二に分かれている。そしてその一年を描…
2016.10.23
表現された秋、という荒野を歩いてみた
 いつから秋なのだろうか。秋はいつから、始まるのか。  俳句歳時記を、僕は見てみた。  「立秋(多くは8月8日)から立冬(多くは11月8日)の前日までが秋になる」  とあっさり書いてあった。  ついでに俳句歳時記のあちら…
2016.8.22
彼の後輪が滑った──6(夏)
 真夏の夜おそく、国道をぼくはオートバイで走った。月も星もない、暗い夜だった。街道の両側は畑であり、民家はなかった。ところどころ、思い出したように、街灯と照明灯の中間のような明かりが立っていた。  一台の長距離輸送トラッ…
2016.8.17
五つの夏の物語|4
 湖のほとりは海岸のようになっていた。そこからなだらかに斜面があり、その斜面ぜんたいに芝生が植えてあった。湖のほとりのそのあたり一帯は、ホテルの敷地のなかだ。だから芝生はきれいに手入れされていた。芝生のスロープを上がりき…
2016.8.16
五つの夏の物語|3
 夏子という名前、そしてその名前が良く似合う、夏の権化のような女性は、ひょっとしたらもっとも純度の高い、夏そのものかもしれない。そのような夏子さんの体験が、僕には一度だけある。  高校生の頃に僕が住んでいた家は、おもてが…
2016.8.12
彼の後輪が滑った──5(夏)
 真夏のかんかん照りの太陽の下を、ぼくはオートバイでかいくぐっていく。エンジンの周囲を経由してくる風の熱を、両脚に感じる。風の通る経路は、きまっているのだろうか。ぼくが左にリーンすると、熱い風は右の脚により強く感じる。そ…
2016.8.3
小さな島にいると自分がよくわかる、という話
 ぼくにとっての小さな島の魅力は、「南」とか「夏」とかの魅力と、不可分に一体となっている。ぼくが大好きな島は、南の島かあるいは夏の島なのだ。真夏でもなお肌寒い北の海の島はまだ体験がないから、好きだかどうだかわからない。 …
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