972編公開中。 今を映す手鏡のように
友人 の一覧
2020.6.29
あるのか、ないのか
縦書き
 ある、という日本語について考えてみた。問題とされているその物がどこかに存在していることを、ある、と言う。この、ある、の反対は、ない、というおなじくひと言だが、ありません、という言いかたが日本語には、ある。ある、という状…
2018.4.4
春まだ浅く、三冊の本を買った夕方
縦書き
 今年の春がまだ浅かった頃、平日の夕方、僕はその大きな書店に三階から入った。奥のエスカレーターでいつものように六階へ上がった。六階の三分の一ほどが洋書売り場だ。洋書売り場の客になると、そのとたん、やや誇張して言うなら、僕…
2017.6.28
ふたりは一九六六年を思い出す
縦書き
 ビートルズが日本に来たとき、ぼくはいわゆる「社会人」となって仕事をしていた。フリーランスのライターとして、いろんな雑誌に文章を書くのが仕事だった。親しく仕事をしていたある雑誌の編集員から、ビートルズの記者会見にいかない…
2017.5.6
生まれてはじめての旅
縦書き
 ぼくは東京生まれだが、子供の頃の十年ほどを、山口県の岩国(いわくに)、そして広島県の呉(くれ)で、過ごした体験を持っている。  目のまえには、あの独特な瀬戸内海、そしてすぐうしろには、おだやかな中国山脈があり、気候は温…
2016.10.2
ジャスト・マイ・サイズ
 彼女がステーション・ワゴンを運転していた。隣の席には、彼女の同性の友人がすわっていた。 「久しぶりに晴れたわね」  彼女が言った。 「気持ちいいわ」  友人が答えた。 「雨の日や曇った日は、自分の気持ちが内面にむかうの…
2016.7.13
その重荷を背負う|アビーロードのB面
 彼はひとりで町を歩いていた。彼のすぐ前をふたりの男性が歩いていた。彼らは親しい友人どうしのようだった。彼とおなじような年齢、そしておなじような服装だった。  ふたりの会話が、すぐうしろから歩いていく彼に、断片的に聞こえ…
2016.5.18
雨の夜、電話ブースで待っていた
 真夜中に電話が鳴った。沖縄が梅雨入りをしたという小さな記事を新聞で読んだ三日後の、雨の夜だった。  女性の友人からの電話だった。電話ブースのなかで雨宿りをしているので、自動車で助けに来てもらえないだろうか、というお願い…
2016.3.29
とてもいい友人どうし
 彼と彼女は、そろそろ四十歳に近づく年齢の、同世代の日本人だ。どちらも二十代の後半に結婚し、どちらも三十代のなかばには離婚した。いまはふたりとも独身だ。都会のなかで多忙に、しかしそれなりに楽しく、日々を送っている。  こ…
2016.3.2
女性たちがニューヨークへ消えていく
 ぼくの身辺から、女性の友人たちが次々に消えていく。十七年まえから現在にいたるまでのあいだに、七人の女性の友人たちが、いなくなった。七人ともすべて、東京を捨ててニューヨークへいってしまったのだ。  十七年まえに、ぼくの女…
2015.12.5
ドーナツの穴が残っている皿
 僕の記憶が正しければ、僕はこれまでにドーナツの穴を二度、食べたことがある。ドーナツではなく、そのドーナツの穴だ。あの穴は、ちょっとした工夫によっては、食べることが出来る。  僕が最初に食べたドーナツの穴は、子供の頃、友…