884編公開中。 今を映す手鏡のように
創作 の一覧
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2017.6.25
登場人物たちの住む部屋
縦書き
 ぼくは十五年以上にわたって、小説を書いてきた。書いている当人にとっては、真剣な遊びのようなものであるが、たとえば税金の申告のときには、作家とか文筆業として申告するので、小説を書くのは仕事でもあるようだ。  その小説の背…
2017.5.21
『彼のオートバイ、彼女の島』
縦書き
 これが文庫本になったのは一九八〇年のことだ。それ以前に単行本で出ていた時期が、三年はあったのではないか。そしてそれは『野性時代』に連載したものだ。とすると、書いたのは一九七五、六年だったということになる。単行本で出たと…
2016.12.4
ノートブックに描いた風景画|9〜13
 9  精悍な印象を全身にたたえた馬だ。だが、表情はきわめておだやかだ。悟りきった果てに到達したひとつの境地のような顔で、コンクリートの歩道を静かに歩いた。  馬にまたがっているのは、ナヴァホの若い女性だった。身につけて…
2016.12.2
ノートブックに描いた風景画|1〜4
 1  三枚かさねた大きなパンケーキをバターとメイプル・シロップの洪水に沈め、彼はナイフとフォークを手術器具のように操り、秩序正しい正統的な食べ方でそれを食べた。  彼の屈強な下半身は、はき古したブルー・ジーンズがつつん…
2016.11.11
万年筆で書く
 文章の原稿をかつて僕は原稿用紙に万年筆で手書きしていた。その期間は延べ三十五年くらいになる。いったい何枚の原稿用紙を、下手な手書きの文字で埋めたか。万単位であることは確かだ。万年筆で原稿用紙に手書きするとは、その頃の僕…
2016.11.7
二百字詰め原稿用紙八百枚
 原稿用紙に万年筆で原稿を手書きしていた期間が二十年以上ある。市販の原稿用紙、あるいは出版社が提供してくれるその社のものを使っていた期間は、ごく短い。大量の原稿を書くようになると、万年筆による手書きという肉体作業を、可能…
2016.10.9
女性作家の作品を支持する
 いまのアメリカの小説は、女性作家たちの作品が面白い。面白い、というのはぼくの個人的な言いかたでありポジティヴだけではなくネガティヴな領域へ広がる部分をも含めて、ぼくは面白いと言っている。つまり、たいへんに興味深いわけだ…
2016.9.19
ショート・ショート
 夏はすでに終っている。九月もなかばをすぎたのだから、当然だ。九月のはじめには、たいへんきびしい残暑というかたちで、夏がまだ残っていた。なかばをすぎたいまでは、どこをどう見渡しても、夏は消えてしまっている。この九月が終る…
2016.9.5
タイム・トラヴェルでどこへいこうか
 タイム・トラヴェル、と片仮名書きされる日本語がある。もとは英語だが、日本語になりきって久しい、と言っていい。なんのことだか意味のわからない人が、けっしていないわけではないが、じつに多くの人におよその意味は通じる。日本語…
2016.6.12
雨の京都で下書きをする
 久しぶりに万年筆を買った。  僕との相性の良さを中心に、いくつかの条件をもっとも高いところで満たしているのはペリカンだから、今回もペリカンにした。まったくおなじ種類のを三本。軸もキャップも透明なプラスティックで出来てい…
2016.5.17
旅と小説はどのように関係し合うのか
 小説を書き始めてから三十数年が経過している。小説と呼び得るものを何編くらい書いたか、見当がつかないほどたくさん書いた、と自分では思っているが、仔細に検討するならじつはさほどの数ではないのかもしれない、という気もする。三…
2016.5.14
彼女たちに名前をつけるとき
 小説を書く僕にとって気になるのは、登場人物たちに名前をつけることだ。名前を考えずに書きはじめると、名前を特定しなければならない状況が、遅かれ早かれかならずやってくる。そうだ、名前をつけなくてはいけない、と思うと同時に、…
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