882編公開中。 今を映す手鏡のように
ホテル の一覧
2017.1.11
灰皿のなかに貿易風が入りこむ
 ハワイのある有名なホテルの、灰皿だ。ぼくは煙草を吸わないが、いくつかあるデスクのどれかの上に、いつもこの灰皿はのっている。この灰皿もまた、これ以上どこにも手の加えようのない、完全な完成品のひとつだ。写真で見ると大きいも…
2016.9.25
正解はブラック・コーヒーの色
 昼食のあと彼はオフィスへ戻った。午後の仕事をはじめて二時間ほど経過して、デスクの外線電話が鳴った。左腕をのばして受話器を取り、書類を見ながら耳に当てた。彼女だった。  電話をかけてきた親しい人に対する最初の言葉として、…
2016.8.7
避暑地
 真夏の、たいへんに暑い日曜日の午後、ひとりで都心の部屋にいた。暑い、暑い、と言っていたら、女性の友だちから電話がかかってきた。高原の避暑地で三日間を快適にすごしたいという気持はないか、と彼女はぼくにきいた。  彼女は、…
2016.8.5
自分の意味が消えるとき
 空を眺めることをなぜ僕が好いているか、その理由をひと言で表現するなら、空を見るとそのたびに、自分というものの意味があっけなく消えてしまうからだ。  空は圧倒的だ。すさまじい。とてもかなわない。しかも、人間の力も存在など…