973編公開中。 今を映す手鏡のように
ピアノ の一覧
2020.7.1
僕はチャーリー・ブラウンなのだから
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 僕が『ピーナッツ』を読み始めたのは、一九五六年ないしは一九五七年のことだった。どちらの年だったにせよ、信じられないことに、その僕は世田谷区で高校生だった。父親の仕事の関係で、自宅にはアメリカの新聞がいつも何種類もあった…
2020.6.22
『ピーナッツ』の日めくりカレンダー
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『ピーナッツ』の日めくりカレンダーをもう何年も使っている。いまこれを書いているワープロのある小さなデスクの左端に、二〇一九年の日めくりが斜めに立っている。まだ三月の八日だから、日めくりは分厚い。厚さは二センチを越えている…
2020.4.21
あの道がそう言った
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白く輝く雲へ  まだ梅雨だがその日は、梅雨明けの初日のように、素晴らしい晴天だった。小田急線の上りひと駅の下北沢で井の頭線に乗り換えて渋谷へ。朝のラッシュアワーの地下鉄銀座線浅草行きのプラットフォームでは、人々が三列にな…
2020.4.8
幸せと才能の関係の物語
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「ハリーだってよ」  と自分が言ったのを、いまでも僕は覚えている。レコード店のなかで友人に言ったのだ。『トロピカル・ダンディー』の細野晴臣さんは、ハリー・ホソノだった。ここでは片仮名で書くけれど、たとえばそのLPのジャケ…
2020.3.17
梅雨の日に傘をさして学校へいったら
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 東京から山口県の岩国へ、そしてそこから広島県の呉へ。戦後に小学生となった僕は、呉に移ったとき五年生だったと思う。今日からあの小学校へ通うのだと言われた小学校へ、初日はまともにいってクラスの全員に、転校生として紹介された…
2017.9.1
ピアノを弾く人
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 ピアノを弾く女性が、好きだ。ひとりの女性の生き身が、ピアノというたいへんに構造的な楽器にたちむかうありさまが、いろんなかたちでぼくの興味をそそるからだ。何人もの女性の友人たちが、ピアノを非常に達者に弾きこなす。それぞれ…
2017.8.23
あなたの家の赤い屋根
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 一般常識のテストで正解を取るのは、ひとつに固定された理解のしかたを、自分もまたなぞることだ。ほんとうはなにも知らない人にとっての、そう教えられたからそう答えておくという種類の、まったく形式上の出来事だ。そしてその形式の…
2017.8.10
スヌーピーはハウンド・ドッグだった
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『これがアメリカだよ、チャーリー・ブラウン』という、全八巻のヴィデオ・シリーズがある。チャーリー・ブラウン、ルーシー、スヌーピー、シュローダーなど、『ピーナッツ』の主人公たちが登場する、アニメーションによるエンタテインメ…
2017.6.3
一九五一年のアメリカの小説
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 ある雨の日の夕方、ぼくは都心のホテルにいた。ホテルを出るとき、一階のロビーの奥にあるブック・ショップに寄ってみた。これから駅へいって特急列車に乗り、小さな旅をしなければならないところだったので、ペーパーバックを二冊か三…
2016.5.18
雨の夜、電話ブースで待っていた
 真夜中に電話が鳴った。沖縄が梅雨入りをしたという小さな記事を新聞で読んだ三日後の、雨の夜だった。  女性の友人からの電話だった。電話ブースのなかで雨宿りをしているので、自動車で助けに来てもらえないだろうか、というお願い…
2015.10.19
コーヒーもう一杯
 七月が終わった。もう八月だ。いまは朝の八時。どんよりとした、という定石的な形容詞がぴたりとあてはまる、すこし重い感じの曇った日だ。気温は、八月のスタート時期にしては、すこし低い。風がとまっている。  ぼくは、コーヒーを…