973編公開中。 今を映す手鏡のように
パリ の一覧
2020.4.22
タイプライターで原稿を書くとき
縦書き
 写真に撮られたアーネスト・ヘミングウェイは何点も見た。すべて記憶は曖昧だが、一点だけいまでもはっきり覚えている写真がある。ハヴァナの自宅で撮影された彼のうしろ姿の全身だ。  壁に寄せて小さな四角いテーブルがあり、その上…
2018.1.29
「リーヴィング・ホーム」
縦書き
 タイトルのリーヴィング・ホームは、直訳的な理解だと、家を去る、という意味だが、このアニタ・ブルックナーの二〇〇五年の小説の文脈では、家を出る、と解釈しておくといい。そしてこの場合の家とは、母親と同義だ。母親といっしょの…
2017.9.18
ヴァーガス・ガールという、架空の女性たち
縦書き
 ヴァーガス・ガールという、架空の美しい女性について書くことにしよう。  ヴァーガスは、VARGASとつづる。ヴァーガス・ガールとして広く知られている一連の美人画を描いた画家の名前だ。フル・ネームは、アルベルト・ヴァーガ…
2017.9.14
パリから一通の封書が届いた
縦書き
 もう何年もまえに東京からニューヨークへいってしまい、いまでは主としてニューヨークとパリで忙しく仕事をしているひとりの女性がいる。彼女はぼくよりも年上であり、ぼくは彼女にとって、あまり出来のよくない弟のような存在だ。彼女…
2017.2.4
エドワード・ホッパーが描いたアメリカの光
 エドワード・ホッパーの画集が欲しいと、もう何年もまえから、ぼくは思っていた。ペーパーバウンドの小型の本でいいから、できるだけたくさんホッパーの絵が収録してあり、彼の絵および彼についてのきちんとした評論ないしは解説がつい…
2016.12.9
戦争は、写真うつりがいい
縦書き
『アメリカ海軍の戦争写真』というタイトルの写真集を、僕はいま見ている。《真珠湾から東京湾まで》と、サブ・タイトルがついている。ジャケットに使ってある写真は、バンカー・ヒルという名前のアメリカ海軍の航空母艦が、一九四五年五…
2016.10.2
ジャスト・マイ・サイズ
 彼女がステーション・ワゴンを運転していた。隣の席には、彼女の同性の友人がすわっていた。 「久しぶりに晴れたわね」  彼女が言った。 「気持ちいいわ」  友人が答えた。 「雨の日や曇った日は、自分の気持ちが内面にむかうの…
2016.2.27
青空とカレーライス
 日本では「私の青空」として知られている「マイ・ブルー・ヘヴン」という歌は、一九二七年のアメリカに登場してヒット・ソングとなった。アカデミー賞が設立され、ベーブ・ルースがニューヨーク・ヤンキーズで六十本のホームランを打っ…