902編公開中。 今を映す手鏡のように
チョイス の一覧
2020.3.26
浅野温子そして薬師丸ひろ子
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 二年前の二○一四年が僕にとっての小説四十周年だった。『野性時代』の創刊号に最初の短編小説を書いてから四十年だ。そして小説以前が十二、三年ある。角川映画が四十周年だという。作家活動と重なってるのですね、としばしば言われる…
2020.3.24
そのうしろに浅丘ルリ子が立っている
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 赤木圭一郎が日活に残した数少ない主演作のなかに、「拳銃無頼帖」という副題を持ったシリーズ作品が四作だけある。四作だけとは、彼の早すぎた死によって四作で終わったから、という意味だ。この四作のうち、最初の二作、『抜き射ちの…
2020.3.19
僕の肩書は「お利口」
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 その日の僕は中学校三年生だったと思う。いまから何年前だろう。原節子が女優として現役だった頃、というほどに昔だ。彼女は三十代だった。現役だから彼女は仕事をしていた。仕事とは撮影所で女優として撮影カメラの前に立ち、さまざま…
2020.3.17
梅雨の日に傘をさして学校へいったら
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 東京から山口県の岩国へ、そしてそこから広島県の呉へ。戦後に小学生となった僕は、呉に移ったとき五年生だったと思う。今日からあの小学校へ通うのだと言われた小学校へ、初日はまともにいってクラスの全員に、転校生として紹介された…
2020.3.12
言葉のなかだけにある日本をさまよう
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 オールタイム、という日本語を文字どおりに解釈するなら、文庫のオールタイム・ベスト10など、とうてい無理だ。勝手に戦後だけに限定しても、戦後の日本で出版された文庫のすべてを所有していて、そのほとんどについてよく知っていな…
2020.3.10
それをマヨネーズ・ブックと称したい
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 一九七二年の確か七月だったと思う。三十代の前半に入ったばかりの僕は、ホノルルのダウンタウンで定宿に滞在していた。南ベレタニアのそのあたりは、いつもは東京にいる僕にとって、一九五〇年代なかばから知っている、故郷のような場…
2020.3.5
ミッキーマウスの両耳
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 ミッキーマウスをふたつ買った。ふたり、と言うべきか。ひょっとして、二体か。あるいは、二匹。上半身の高さが十一センチほどなので、ふたつでいいのではないか。良く出来ている。赤い半ズボンから黒くて細い脚が出ていて、その先端は…
2020.3.3
秋の雨に百円の珈琲を
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 十月初めの平日、雨は朝から降っていた。昼前に窓から外を見たら、雨はやんでいた。たたんだ傘を持って人が歩いていた。雨は降ったりやんだりの一日なのだ、と僕は思った。夕方近く、自宅を出ていつもの私鉄駅へ歩いていくとき、僕は傘…