972編公開中。 今を映す手鏡のように
カウンター の一覧
2020.6.30
TVの記憶をふたつ
縦書き
 当時の僕の仕事場はたいそう快適だった。東の端にあった階段を二階へ上がり、まっすぐの廊下を西へ向けて歩いていき、突き当たりにあった和室を抜けると、二十畳ほどの広さの人工芝のヴェランダだった。このヴェランダの南西の角に、温…
2020.4.7
入ってみよう、とお前が言った
縦書き
 私鉄駅南口から歩いて五分の小さなバーだ。その小ささの隅々まで、バーらしさがいきわたっていた。バーらしさと言うか、時間を越えていると言うべきか。いつともわからない、かなり遠い過去のどこかに、出発点を持った、バーらしさだっ…
2016.7.8
彼女は浴室の窓から入って来た|アビーロードのB面
 カフェのカウンターのなかで、いつもコーヒーを作っている初老の男性が、カウンターで立ってコーヒーを飲んでいる客に、言っていた。 「そして、どうしたかと言うと、彼女は浴室の窓から入って来たんですよ」  軽く憤慨したような、…
2016.6.11
美しい謎の霧子はどこへ消えたのか
 霧子は完璧だった。彼女自身にとって、そして彼女の相手となる人にとっても、まったく負担にならない性質の、たいへんな美貌だった。控えめでもの静かで、冷静そうな雰囲気は、頭やセンスの良さの当然の反映だったにちがいない。姿は素…
2016.5.5
菖蒲湯そして乾杯
 端午の節句には京都にいた。なんの用件も目的もないまま、ただでかけてみたくなってやってきた京都だった。イノダでコーヒーを飲めばそれで充分だというような、一泊するだけの小旅行だ。  イノダでは、たしかにコーヒーを飲んだ。三…