882編公開中。 今を映す手鏡のように
エッセイ・コレクション の一覧
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2017.7.25
イースト・サイドの、暑い日の午後の消火栓
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 それほど緊急の用事でもない、という感じでパトロール・カーがくる。歩道に寄ってそのパトロール・カーはとまり、サマータイム・ユニフォームを着た中年の警官がふたり、外に出てくる。ひとりは居心地悪そうにあたりを見まわし、レンチ…
2017.7.16
「あんた、なに食う?」
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 ホノルルの下町の、日系人たちが主として日常的に利用する安食堂の雰囲気を言葉で描写するのはなかなかむずかしい。安食堂という言葉は、けっして悪い意味ではない。そのような場所でのそのような食堂は、「安食堂」以外ではありえない…
2017.7.9
紙のプールで泳ぐ
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 プールというものは、普通、そのなかに満たしてある水のなかで泳ぐためにある。プールで泳ぐといろんなふうに楽しいことは、すでに多くの人たちがよく知っている。プールで泳ぐと、気持ちよかったり、すこし悲しかったり、心が開いたり…
2017.7.8
キイチゴはどこに実っていたか
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 電話が、鳴った。  きまぐれをおこして、ぼくはその電話に出てみた。 「私です」  と、電話の相手は、言った。  そうか、きみか。  車を手に入れた、と彼女は報告してくれた。  車をとりかえるつもりだということは、春さき…
2017.7.6
食卓には花を!
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 アパートメントの部屋を、彼女は出てきた。彼女の部屋は三階にある。小ぶりなアパートメントだが、ユニットごとに複雑に組み合わせたかたちになっていて、このかたちの人工的なところが彼女は気に入っている。そして、住み心地は、とて…
2017.7.2
日時計の影
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 昼間なら広い庭を見渡すことの出来る窓辺のテーブルで、ぼくは彼女と親しくさしむかいだった。遅い夕食を、ぼくたちは、いっしょに食べようとしていた。多忙な彼女のスケジュールにあわせていたら、今日の夕食はこの時間になってしまっ…
2017.7.1
少年の頃、写真家は、夏の日を見ていた
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 ジョエル・マイエロヴィッツの新しい写真集を手に入れた。『夏の日』というタイトルの写真集だ。『夏の日』というようなタイトルのもとに、マイエロヴィッツがどのようなカラー写真を見せてくれるのか、大いに期待して、僕はこの写真集…
2017.6.29
彼女が雨を見る態度
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 1   秋の雨の頃、仕事の帰りに彼女は京都に一泊した。京都は雨だった。その雨の京都から、彼女は、親しい友人に宛てて、絵葉書を出した。絵葉書に彼女は次のように書いた。 『雨の京都で蛇の目を買いました。さっそく、それをさし…
2017.6.26
どこにでも部屋を作る才能
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 彼女はテントをいくつも持っている。興味を引くテントを見ると買ってしまう。だからいつのまにか数多くなる。いまでは毎年ひとつ、テントを買っている。冬のあいだに買い、春になると試してみる。そして夏に最終的な試用をし、秋から冬…
2017.6.22
模型飛行機の午後
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 週末の午後の待ちあわせの場所へ、彼女は、紙包みをかかえてあらわれた。ふと入ったホビー・ショップでみつけて衝動買いしたのだと言いながら、彼女は包みのなかのものをぼくに見せてくれた。  ゴム動力で飛ぶ模型飛行機の組立てキッ…
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