981編公開中。 今を映す手鏡のように
ウェイトレス の一覧
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2020.9.11
御八つ、お三時、三時ですよ
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 こうしてスパゲッティ・ナポリタンを初めて体験してからの僕が、なにかと言えば店でナポリタンを食べる子供になったかというと、そんなことはなかった。ナポリタンを作ってくれるよう、母親に頼む子供にもならなかった。なぜなら、この…
2020.6.12
読売新聞、金曜日夕刊
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1  義  自分の名前にある義という字について。男のこが生まれたらヨシオにしよう、と父親は考えていたが、彼は漢字のまったく書けない日系二世で、音声としてのヨシオを好いていただけだ。漢字をみつくろったのは母親だ。ヨシオのヨ…
2020.4.23
ほんの一瞬がポートレートとして後世に残る
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 リチャード・フォードの『ワイルドライフ』は買ってあった。探したらすぐに見つかった。一九九一年にロンドンで刊行された、フラミンゴというペイパーバック・シリーズのうちの一冊だ。ほかにさらに二冊あった。買ったからには読もうと…
2017.9.21
波の上を歩いた姉
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 十五歳の夏の終わりに、姉は日本からカリフォルニアへ帰った。僕はハワイへ戻った。島はおなじだが、もとの家ではなく、新しい家だった。僕はまだ十歳になるまえだった。感謝祭が近くなった頃、姉はカリフォルニアからその家へ来た。姉…
2017.7.16
「あんた、なに食う?」
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 ホノルルの下町の、日系人たちが主として日常的に利用する安食堂の雰囲気を言葉で描写するのはなかなかむずかしい。安食堂という言葉は、けっして悪い意味ではない。そのような場所でのそのような食堂は、「安食堂」以外ではありえない…
2017.6.13
金魚と散歩だ
縦書き
 梅雨の晴れ間、平日の午後、約束どおりの時間に、僕はその喫茶店の自動ドアを入った。彼女が指定した喫茶店だ。僕もときどきここでコーヒーを飲む。彼女と偶然にここで逢うことが、これまで一度もなかった。そのことについて思いながら…
2017.1.24
素敵な女性作家たち(2)
素敵な女性作家たち(1) ■本を捜すときには、どうするのですか。カードとか、パーソナル・コンピューターとか、使うのですか。  まさか。そんなことをするわけがないでしょう。買ってある本のつまっている棚のまえに立ち、適当に抜…
2017.1.23
素敵な女性作家たち(1)
■このジャンルの本ならいつでも読みたい、というような領域はありますか。お勧め、というか、この領域のなかならいつ読んでも面白い、というような。*  手近なところでとっさに思いつくのは、いまのアメリカの、女性の作家たちによる…
2016.11.12
万年筆についての文章
 原稿料のともなう文章を、僕は大学生の頃から書き始めた。原稿料がともなう文章とは、この場合は、商業的に出版されている雑誌に書く、という意味だ。  そのような文章には、当然のことだが、締切りがある。なにを書くにしても、その…
2016.11.6
彼は鉛筆を削りながら交差点を渡っていった
 かつて鉛筆で原稿を書いていた頃、僕は自宅ではその鉛筆をナイフで削っていた。スイス・アーミー・ナイフ、つまりヴィクトリノクスあるいはウェンガーのどちらでもいい、長さ五センチと一センチ八ミリの大小ふたつの刃が一枚ずつついて…
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