884編公開中。 今を映す手鏡のように
『音楽を聴く』 の一覧
2017.8.23
あなたの家の赤い屋根
縦書き
 一般常識のテストで正解を取るのは、ひとつに固定された理解のしかたを、自分もまたなぞることだ。ほんとうはなにも知らない人にとっての、そう教えられたからそう答えておくという種類の、まったく形式上の出来事だ。そしてその形式の…
2017.8.22
純情だったあの頃のリンゴ
縦書き
 戦後、というと「リンゴの唄」だ。昔の日本人の心のなかで、両者は一本の線で結ばれている。心のなかと言うよりも、いわゆる一般常識のなかでは、と言ったほうが正確かもしれない。「敗戦後のなんにもない虚脱状態の日本人たちの胸に、…
2017.8.19
去りにし夢、しのぶ面影
縦書き
〈江利チエミのメモリアル・シリーズ〉というCDが、僕の知るかぎりでは九枚ある。そのなかの『艶歌を歌う』と、ついでに『ラテン、ポップスを歌う』の二枚を、ある日の午後、銀座で僕は買ってみた。江利チエミという名前は、僕だってよ…
2017.6.24
波止場通りを左に曲がる
縦書き
 デビューしてまだ間もない頃の美空ひばりを、何点もの写真で見ることができる。多くの写真に彼女は撮られ、それはさまざまな刊行物のなかに複製されている。そのような写真を数多く見ていくと、やがてはっきりわかってくることがひとつ…
2016.7.12
君はなぜ恋しいか
 歌謡曲、あるいは流行歌、どちらでもいいけれど、もの心についてから現在にいたるまで、僕はそれらとどのような接触を持っただろうか。もの心ついてから現在にいたる期間は、日本の戦後五十数年という期間そのままだ。  幼時から子供…
2016.2.26
町にまだレコード店があった頃(3)
 中古のレコードを骨董市のようなところで買う体験を一度だけしてみたい、と僕はかねてより思っていた。僕はコレクターではないし、掘り出し物との遭遇に情熱を注ぐタイプでもない。だから体験は一度でいい。川越の成田山別院というお寺…
2016.2.25
町にまだレコード店があった頃(2)
 海原千里・万里のLPも残っていた。名前にひかれるところもあるが、十二曲のうち八曲までがいわゆる大阪ものであることから、僕はこのLPを買ったのだ、といま僕は推測する。大阪ものへの興味は、フランク永井に触発された。「大阪ぐ…
2016.2.24
町にまだレコード店があった頃(1)
 町にまだレコード店があった頃、そしてそれらのレコード店でLPをしきりに買っていた頃、僕はときどき歌謡曲のLPも買った。かつて全音の『歌謡曲全集』で見つけて気に入ったいくつもの歌のタイトルを、僕は記憶していた。レコード店…