884編公開中。 今を映す手鏡のように
『アール・グレイから始まる日』 の一覧
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2017.4.11
東京で電車に乗ると、なにが見えますか
縦書き
 結婚式場の広告ポスターを、僕は以前から興味を持って観察している。東京だと、結婚式場の広告ポスターは、電車のなかに特に多い。  文字だけで構成したポスターは皆無だと言っていい。結婚した女性が手に入れるはずとされている幸せ…
2016.12.12
「理解」などするからいけない
 日本では英語の勉強は中学からはじまることになっている。しかしそれ以前から、一見したところ単純な単語なら、すでにいくつも知っているのが普通だ。「犬」は dog、「本」は book、そして dog は「犬」、book は「…
2016.11.27
彼女から届く絵葉書
 彼女と知り合って三か月ほどして、彼女からの最初の絵葉書が私のところに届いた。国内の旅先からであることが消印からわかった。フラミンゴの絵葉書だった。フラミンゴのひな鳥が、親鳥から口うつしで餌をもらっているところが、縦位置…
2016.9.18
午後の紅茶の時間とは
 いま僕が滞在を許されているお屋敷では、午後三時になると、三時ぴったりに、僕の仕事部屋のドアにノックの音が聞こえる。はい、と僕が返事をすると、お茶のお時間でございます、いかがなさいますか、とドアのむこうから女性の声がきい…
2016.7.18
僕がもっとも好いている海岸
 マウイ島のぜんたいを上空から見ると、人の胸像を横から見たような形をしている。その顎の下あたりにあるマアラエアから30号線を西にむけて自動車で走るのが、僕は子供の頃からたいへんに好きだった。ほかの場所もいいのだが、マウイ…
2016.7.16
女王陛下|アビーロードのB面
 彼女はその日の午後、郵便局へ行った。オフィスの郵便物を出すためだ。窓口には数人の列が出来ていた。その列に加わり、彼女は自分の順番が来るのを待った。  あとひとりで自分の順番というときになって、彼女は自分の前にいる人と窓…
2016.7.15
The End|アビーロードのB面
 彼女と彼は、抱き合っていた。相手の体に深く両腕をまわし合い、顔を接近させていた。そして赤い小ぶりな林檎をひとつ、ふたりはおたがいの口で、顔のあいだに支えていた。  ふたりはその林檎を、ひと口ずつかじっては食べていた。食…
2016.7.13
その重荷を背負う|アビーロードのB面
 彼はひとりで町を歩いていた。彼のすぐ前をふたりの男性が歩いていた。彼らは親しい友人どうしのようだった。彼とおなじような年齢、そしておなじような服装だった。  ふたりの会話が、すぐうしろから歩いていく彼に、断片的に聞こえ…
2016.7.9
ゴールデン・スランバーズ|アビーロードのB面
 この激しい降りようは、いったいどうしたことだろうかと、彼女はひとりで思った。叔母さんの家で過ごした、明るく陽の射す午後が、まるで嘘のようだ。あの午後が終わってから、まだ五時間ほどしか経過していないのだが、あの午後といま…
2016.7.8
彼女は浴室の窓から入って来た|アビーロードのB面
 カフェのカウンターのなかで、いつもコーヒーを作っている初老の男性が、カウンターで立ってコーヒーを飲んでいる客に、言っていた。 「そして、どうしたかと言うと、彼女は浴室の窓から入って来たんですよ」  軽く憤慨したような、…
2016.7.6
パムとはパミラのことか|アビーロードのB面
 町にいたときは快晴だったのだが、海岸まで来てみると、空には雲が出はじめていた。海岸は広く快適だった。人の姿は、遠くにひとりふたり、小さく見えているだけだ。  パミラは、初夏の街着のまま、海岸から海のなかへ入っていった。…
2016.7.5
ミスタ・マスタード|アビーロードのB面
「お若いの、今日も元気かい」  公園の浮浪者が、低い位置から彼にいきなり、声をかけた。  彼は午後の公園をひとりで歩いていた。空は灰色に曇っていた。雨は降っていないのだが、今日も彼はシャツの上に木綿のレイン・コートを着て…
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