882編公開中。 今を映す手鏡のように
『アップル・サイダーと彼女』 の一覧
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2017.5.10
ノートブック
縦書き
 五月はじめのタヒチ。快晴の一日がほぼ終わり、太陽が海に沈む時間がはじまろうとしていた。  ホテルのプールサイドから、人々は部屋にひきあげていた。シャワーを浴びてひと休みしてから、夜の服に着がえるのだ。  プールのわきに…
2017.5.5
少年たちの共和国
縦書き
「おもしろブック」に連載されていた『少年王者』を夢中になって読んだのは、いつごろだったのだろうか。小学生あるいは中学一年、二年といった年齢のころのようだ。  発売日に書店まで歩いていき、帰り道に道ばたにすわりこみ、『少年…
2017.2.2
アメリカの小さな町
 ハイウェイから離れて、田園地帯の中の二車線の道路を行く。あたりは、絵に描いたような美しさだ。  ゆたかな緑が広がり、空気はきれいで、道路には、ぼくたちの乗った自動車しか走ってはいない。  道路の脇に、町の名を書いた標識…
2017.1.27
他人の虹の端に向かって
 虹が空に出る。消えてしまわないうちにその虹の一端までいく。虹が地面のすぐ近くから出ていたなら、その地面を掘る。すると、そこに埋められている秘宝が、自分のものになる。虹の端、ジ・エンド・オブ・ザ・レインボーには、宝が埋ま…
2016.12.25
これが天使の町だって?
 ロサンゼルス空港を飛び立った飛行機が、高度をあげていった。主翼のすぐ前の窓際にすわって、窓の外を見ていた。ぴかぴかにみがかれた主翼が、冬の午後の太陽をうけとめて光り、まぶしかった。  眼下に、ロサンゼルスの町が広がって…
2016.10.30
アップル・サイダーと彼女
 アメリカの農業地帯に入りこんでいることは、数日まえからわかっていた。夜のモーテルで見るテレビに、たとえば肥料のコマーシャルが多くなっていたし、昼間、ハイウェイを走るときには、農作業用のトラクターやコンバインをつんだトラ…
2016.10.17
ぼくの好きな大空間
 最初に北アメリカ大陸を西から東へ自動車で横断したときは、その横断になんの目的もなかった。とにかく、ただ、横断してみたかったのだ。  あの広大な大陸は、地形が複雑だ。気象もそれに応じて変化する。この、地形と気象の変化だけ…
2016.9.24
悲しき雨音
 雨が降っている。九月の終わりの、何曜日だろう。何曜日でもいい。雨の日なのに、空気はとてもさらっとしている。秋だ、さすがに。空気が、肌にとても心地よい。  雨の香りがしている。  午後だ。何時ごろだろう。何時でもいい。午…
2016.8.30
長距離トラックと雨嵐
 沈んでいく太陽にむかってアリゾナを西に走ると、あらゆるものが、黒いシルエットだ。  夏の終わりの雨嵐も、シルエットで見ることができる。  行手の荒野が、暗い影のなかにのみこまれている。丘のつらなりや、その丘に生えている…
2016.8.26
ラスト・アメリカン・カウボーイ
 夏の終わりちかく、カンザス州のどまんなか。  どの方向に見渡しても、地平線までまったいらな、農業国アメリカの、途方もなく広い畑だ。  早朝なのに、青い空には熱い太陽が、すでにかんかん照りだ。  大地からは、水蒸気が、も…
2016.6.26
トリップ・カウンター・ブルースだってよ
  1  エンジンをかけるため、路面が硬くて平坦なところへ、バイクを押し出していく。サイドスタンドをあげたとたんに、バイクの重さを全身に感じる。すさまじい重さだ。  かすかなダウングレードを、うしろむきに降りていく。生ゴ…
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