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評論・エッセイ

より良き日本語の人

 日本の最たるものはなにかと訊かれたなら、それは日本語です、という答えしかない。日本を日本らしさに満ちた日本そのものに保ち続ける力で最大のものは、日本語という言葉が発揮する力だ。ここで僕が言う日本語とは、戦後五十数年間の日本国内で日本人が縦横に駆使し、そのことをとおして戦後の日本を作ってきた日本語、というほどの意味だ。
 日本国内を日本国内たらしめている最強の力、それは日本語の力だ。戦後の日本はその日本語の力で機能してきた。特化したと言うならこれを越える特化はないほどに、日本語は戦後の日本のなかで特化をとげた。敗戦から出…

底本:『日本語で生きるとは』筑摩書房 1999年

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