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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

考えるとはなになのか

 頭は生きているうちに使え、という言いかたはいつ頃からあるものなのか。最近はあまり聞かないように思う。僕が子供の頃、大人たちはなにかあればこう言っていた。頭は生きているうちに使え。なるほど。生きるとは頭を使うことか。
 ただしこの文脈で言うところの生きているうちとは、日常のなかで現実的なルーティーンをこなす日々でしかないし、したがって頭を使うとは、ルーティーンのもっとも効率の高いこなしかたのみを、意味している。そこでは答えはとっくに見つかっている。立ちあらわれる状況へ、その答えを次々にあてはめてはなぞること。使う頭とはそ…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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