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評論・エッセイ

あの夏の女たち

 まずはじめに、彼女の頭が見えた。海の水に濡れた髪が、うなじにはりついていた。すんなりとした首と、ひきしまって無駄のない肩が見えた。それから、胸の三角形の小さな布きれと細いひもの組み合わせでできているビキニ・トップの胸が見えた。両腕の大部分が、あらわれた。右腕にサーフボードをかかえていた。六フィート一インチほどの、スワロー・テイルだった。
 波打ちぎわから長い砂のスロープを歩いてきた彼女は、そのスロープの終わりにかなり急な傾斜とともに横たわっている砂丘をむこうがわからのぼってきて、頂上に出ようとしているところだった。
底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年
『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年所収

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