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評論・エッセイ

身辺に猫を増やしたい

 前足をそろえて体をのばし、おそらくミルクをくれた人を、大きな目を見開いて、賢そうに見上げているほうの猫は、高さが六センチ五ミリだ。白と淡いオレンジ色の毛なみは、足先が見事に白であることによって、引き締まっている。もうひとつの猫は、高さが五センチ五ミリだ。やや姿勢を低くして、左足の先で左耳のうしろをしきりに掻き、左の目を閉じている。こちらの猫も毛なみはまったくおなじで、顔立ちもよく似ている。
 二匹の猫ではなく、おなじひとつの猫の、違ったポーズないしは状態なのだ、と僕は理解している。材質は僕には瀬戸物としか言いようがない…

底本:月刊『ねこ新聞』2015年10月12日

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