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評論・エッセイ

道路への関心と小説

『佐多への道』という本を何年かまえに僕は英語で読んだ。アラン・ブースというイギリスの人が、北海道の宗谷岬から九州の佐多岬まで、出来るだけ都市化されていない田舎の部分を選んで、ひとりで歩きとおした紀行文だ。歩くということ、あるいは、歩いていく道についての記述も面白かったが、中心となるテーマは、自分たちとはまったく異質なものに見えてしまうものに対する日本人たちの反応のしかたであり、それを僕はもっとも興味深く読んだ。
 日本を南の端から北の端までつらぬく一本の道というものに、僕もずっと以前から関心を持って来た。自分にとっての、…

底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年

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