アイキャッチ画像

メモ・パッドに文化の質を認識する

LinkedIn にシェア
LINEで送る
Pocket

 ロジャというブランドの、フランス製のメモ・パッドは、じつによく出来ている。いちばん小さいサイズは11番といい、これは掌のなかにおさまる。もっとも大きいサイズのものを、デスクに横に置いて目のまえに開くと、その長方形の広さは、ゆったりと充分にある。縦と横とのバランスが、この上なくいい。

 紙の色は、白、ピンク、赤、ブルー、黄色、グリーンと、何色かそろっている。どの色も微妙な淡い色であり、視覚をとおして気持ちの上で邪魔になるような押しつけがましさのまったくない色だ。紙の色が変わっても、5ミリの方眼の色は変わらない。この方眼の色もまた、考え抜かれた色なのだと、ぼくは思う。

 もっとも小さい11番のメモ・パッドは、ほんのひと言、ふた言をメモするものとして、これほどに完成された、しかも使い心地の良いメモ・パッドを、ぼくはほかに知らない。100枚つづりの全ページにミシン目が入っていて、切りとったときのサイズは 68 × 85 ミリだ。このサイズは、完璧と言っていい。これより大きいと、無駄になる部分が出来てくるし、これより小さいと、使い勝手はすこし落ちるだろう。

 厚いしっかりした台紙の上に100ページの紙が乗っていて、さらに表紙がついている。そしてそのぜんたいが、ステイプラーであっさりとめてある。表紙は、台紙の裏へまわしこんでおくことが出来る。折るときのための折り線が、あらかじめつけてある。

 どのサイズも、それぞれに使いやすい。使う人のことをよく考えてある証拠をひとつあげると、11番とそのひとつ上の12番とでは、台紙の厚さがちがっている。サイズが大きくなったぶんだけ、12番の台紙のほうが厚いのだ。理にかなっている。

 方眼は、横罫よりも楽しい。アイディアを紙の上でつつきまわしているとき、縦にも横にも、そして斜めにも、自由に気持ちが動くのが方眼のいいところだ。ミシン目の大きさすら、ぼくは褒めたい。切りとっていくときの感触は、最高だ。

底本:『彼らと愉快に過ごす──僕の好きな道具について』小学館 1987年


1987年 『彼らと愉快に過ごすー僕の好きな道具について』 フランス メモ・パッド ロジャ 文房具 道具
2016年4月26日 05:30
サポータ募集中