972編公開中。 今を映す手鏡のように
2015.10.22
理想の窓辺にすわるとき
 理想の窓というものを、僕はときたま思い描く。自分にとっての、理想的な窓だ。そのような窓を、僕はまだ手に入れていない。しかし、好みの窓はあちこちにいくつかある。どの季節のどんな時間でも、その窓辺は楽しい。窓辺の椅子にすわ…
2015.10.21
祖父のポケット・ナイフ
 いまぼくはこのみじかい文章を、お気に入りの原稿用紙に鉛筆で書いている。鉛筆は、いつものステドラーの5Bだ。原稿用紙のすぐわきには、ポケット・ナイフがひとつ、置いてある。このポケット・ナイフについて、ぼくは書こうと思う。…
2015.10.20
父親と万年筆
 僕の父親は、ハワイで生まれてカリフォルニアで育った、日系二世のアメリカ人だ。ひとりの人としての核心部分まで二世らしさの貫徹した、謎の多い不思議な人物だった。二世の見本のような人だった、と言っていいだろう。このような人た…
2015.10.19
民主主義は買えなかった
 戦争に負け、すっかりなにもなくなってしまった、と日本人みずからあっさり認めた空白の状態のなかへ、アメリカがやって来た。異文化が軍隊という組織となって、日本へ進駐して来た。1945年8月28日、米軍先遣隊、厚木に到着、と…
2015.10.19
コーヒーもう一杯 
 七月が終わった。もう八月だ。いまは朝の八時。どんよりとした、という定石的な形容詞がぴたりとあてはまる、すこし重い感じの曇った日だ。気温は、八月のスタート時期にしては、すこし低い。風がとまっている。  ぼくは、コーヒーを…
2015.10.19
心が爆発する|エルヴィスから始まった
 フロンティアが消滅すると同時に、アメリカの価値は変転しはじめた。アメリカはもはや唯一無二の希望の土地ではなくなり、世界の動きとともに、アメリカの価値もかわっていったのだ。アメリカは単独では存在できなくなり、世界の影響を…
2015.10.19
紀子が住んでいた家
 映画と家あるいは間取り、という主題がまっすぐに結びつくいまの僕の興味は、紀子が住んでいた家だ。紀子とは、小津安二郎という映画監督がかつて作った、『晩春』『麦秋』そして『東京物語』という三本の映画のなかで、主演の原節子が…
2015.10.19
男だって子供を生まない
 いまの日本の社会が持っているはっきりした傾向のひとつとして、出生率の低下をあげることが出来るという。子供を生まない人たちが増えていて、しかもその傾向はこれからさらに強まっていくのだそうだ。  子供を生まない女性が増えて…
2015.10.19
鉛筆を削る楽しさ
 僕は鉛筆を削るのが好きだ。鉛筆そのものも、そして鉛筆でなにか書くのも好きだが、削るときがもっとも楽しい。だから僕は削るために鉛筆を買う。僕の好みに合うのは、アメリカの鉛筆だ。西ドイツやイギリスの鉛筆も悪くないけれど、ア…
2015.10.19
オートバイはぼくの先生
 自動車は面白くもなんともない。乗っていても、すぐに飽きてしまう。たったいま書いたように、窓がテレビジョンのように思えてきて、退屈このうえない。それに、自動車でいくら長距離を走っても、自分の車の室内には、いつもの生活のに…
2015.10.19
ハワイのいなり寿司
 ハワイの田舎町の、ひなびた感じのスーパー・マーケットのはじっこ。「オカズ屋」という店でたわむれに買って食べたいなり寿司は、大げさに言うと、百年まえの日本の味がした。百年まえの日本をぼくが知るわけないのだが、ハワイの一角…