949編公開中。 今を映す手鏡のように
2015.12.10
西陽の当たる家
 僕は西陽の当たる家が好きだ。午後になったら自分の家は西陽を受けとめてほしい。そしていくつかの部屋には西陽が射しこんでほしい。これまで僕はいろんな場所でさまざまな家に住み、いくつもの部屋を自分の場所として使ってきた。しか…
2015.12.9
一度だけ読んだハメット
 僕はハメットを一度だけ読んだことがある。短編をひとつ、しかも翻訳された日本語で。それはいまから二十八、九年も前のことだ。『マンハント』というアメリカの雑誌の日本語版が毎月刊行されていて、その頃の僕はおそらくその雑誌に雑…
2015.12.8
イマジン、のひと言につきた
縦書き
 ジョン・レノンの名前を見たり聞いたり、あるいは彼についてふとなにかを思ったりするとき、僕はまっ先に頭に思い浮かべるのは、一点の絵だ。ジョンがまだリヴァプールでアート・スクールの学生だった頃、同級の女性がジョンの肖像画を…
2015.12.7
チャタヌーガ・チューチュー
縦書き
 朝のまだ早い時間なのに、居間はもう暑かった。陽がさしこんだりはしないのだが、むっとするような空気がこもっている。  新聞を持った徳一は、居間からキチンへ歩いた。  キチンは北側にあり、この小さな家のなかでは、たいていの…
2015.12.6
ストーリーは銀行に預金してある
 ドーナツの店のカウンターで、僕はドーナツを食べながらコーヒーを飲んでいた。隣りにすわった男性が話しかけてきた。いつもの顔なじみに、ひょいと世間話をむけるのとおなじ調子で、 「やっこさんは、いい大統領だよ。俺は気にいって…
2015.12.5
ドーナツの穴が残っている皿
 僕の記憶が正しければ、僕はこれまでにドーナツの穴を二度、食べたことがある。ドーナツではなく、そのドーナツの穴だ。あの穴は、ちょっとした工夫によっては、食べることが出来る。  僕が最初に食べたドーナツの穴は、子供の頃、友…
2015.12.3
レッドウッドの森から
1  川に沿ってのぼっていった。透明さの極限をきわめたような、冷たく澄んだ川の水が、きれいな音をたてて流れていた。砲丸投げの砲丸を平たくしたほどの大きさの砂利が、川底にそして川原いっぱいに、広がっていた。  野生の鹿やエ…
2015.12.2
地球を照らす太陽光の純粋な原形
 子供の頃から現在にいたるまで、僕はアメリカの雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』の愛読者だ。好きな雑誌を一種類だけ選べと強制されたなら、僕は『ナショナル・ジオグラフィック』を選ぶだろう。  もの心がついたとき、この雑誌…
2015.12.1
ひとりでアイディアをつつきまわす午後
 冬のはじめ、ある日の午後、僕はひとりで道を歩いていた。歩きながら、僕はいろんなことを考えた。  アメリカン・トップ40は絶対に小説にすることが出来るはずだ、というようなこともその僕は考えた。ナンバー40からナンバー1ま…
2015.11.29
手紙
 ぼくのアメリカ人の友人が仕事で日本にやって来て、半年ちかく滞在した。豊島園のちかくの、キャべツ畑のなかの安いアパートに入り、毎日ほんとうに元気に飛び歩いて、仕事をこなしていた。ぼくも彼も多忙な日がつづき、ゆっくり会うこ…