882編公開中。 今を映す手鏡のように
2015.12.3
レッドウッドの森から
1  川に沿ってのぼっていった。透明さの極限をきわめたような、冷たく澄んだ川の水が、きれいな音をたてて流れていた。砲丸投げの砲丸を平たくしたほどの大きさの砂利が、川底にそして川原いっぱいに、広がっていた。  野生の鹿やエ…
2015.12.2
地球を照らす太陽光の純粋な原形
 子供の頃から現在にいたるまで、僕はアメリカの雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』の愛読者だ。好きな雑誌を一種類だけ選べと強制されたなら、僕は『ナショナル・ジオグラフィック』を選ぶだろう。  もの心がついたとき、この雑誌…
2015.12.1
ひとりでアイディアをつつきまわす午後
 冬のはじめ、ある日の午後、僕はひとりで道を歩いていた。歩きながら、僕はいろんなことを考えた。  アメリカン・トップ40は絶対に小説にすることが出来るはずだ、というようなこともその僕は考えた。ナンバー40からナンバー1ま…
2015.11.29
手紙
 ぼくのアメリカ人の友人が仕事で日本にやって来て、半年ちかく滞在した。豊島園のちかくの、キャべツ畑のなかの安いアパートに入り、毎日ほんとうに元気に飛び歩いて、仕事をこなしていた。ぼくも彼も多忙な日がつづき、ゆっくり会うこ…
2015.11.28
二本の映画と一杯のコーヒー
1  ある秋の日の午後おそく。重い灰色に曇った日だった。タ暮れが近づきつつあり、重い灰色の中には、妙に季節感のない暮色が、いくらかは、かさなっていたはずだ。  ぼくは坂を降りてきた。その盛り場は、何本もの坂の途中や、坂か…
2015.11.27
『東京の宿』1935年(昭和10年)
 昭和10年に公開された日本の娯楽映画を、たとえば向こう3か月のうちに10本ほど映画館で見る、というようなことは、いまの日本ではまず不可能だ。数の揃っている店へいき、ヴィデオとして市販されている昭和10年製の娯楽映画を、…
2015.11.26
青春映画スターとの再会
 秋のある日、彼は仕事の一部として、一本の映画を配給会社の試写室で見た。上映がはじまるまえ、配られた資料を見るともなく見ていた彼は、その映画の配役のなかにひとりの女優の名をみつけた。  カタカナで書いてある彼女の名を見た…
2015.11.25
『メイン・テーマ』
 1983年の夏の終りに、ぼくは軽井沢で角川春樹氏と久しぶりに会った。ラジオ番組のための楽しい談話の時間を、3時間ちかく持った。来年、つまり1984年の夏、森田芳光監督、薬師丸ひろ子主演で映画を一本公開したいと思っている…
2015.11.24
アイラ・ウッドの『キチン・マン』はなぜ面白いか
 アイラ・ウッド『キチン・マン』 ■面白かったほうの本の話をうかがいましょうか*。  たとえば、アイラ・ウッドの『キチン・マン』ですね。はじめて聞く名前ですし、この小説は彼にとって最初の作品だそうです。劇作はたくさんおこ…
2015.11.22
演説
 1960年の11月に、ジョン・F・ケネディは、共和党の大統領候補であったリチャード・ニクソンを僅差で破り、アメリカの大統領になった。  ニクソンが大統領になるかもしれないという可能性に反対していたぼくは、ケネディの勝利…