882編公開中。 今を映す手鏡のように
2015.12.15
誰がいちばん初めに波に乗ったのか
 誰がいちばん初めにサーフィンを考えついて実行したのか、わかっていない。  ちょっとした板っきれをボディ・ボードに使ったサーフィンは、数千年の歴史を持っているにちがいない。南太平洋の、どこかの小さな島で、ある日、波乗りは…
2015.12.14
一台のオートバイが、ひとりの現代人を不安から救った
『息子と私とオートバイ』を書くための基本的な体験となったオートバイ旅行をしたとき、著者のロバート・パーシグは三十九歳だった。十一歳になる息子のクリスとタンデムで、ミネソタ州のミネアポリスからカリフォルニアまで、一台のオー…
2015.12.13
絶望のパートタイム・サーファー
 いまの日本の人たちほど不自然で無理な生きかたをしている人たちは、世界のどこにもいないと言っていい、という感想を僕は持っている。ここで僕が言ういまとはどのくらいの時間の幅なのか、僕が自分で体験した範囲内で言うなら、高度成…
2015.12.12
ザ・ビートルズから届いた
 ここにあるこのビートルズの写真には、4人のサインがしてある。彼らに詳しい人の鑑定によるとこのサインは本物だということだ。一枚の写真に4人がサインするには、そのとき4人はひとつの場所にいなければならない。あるいは、4人の…
2015.12.11
映画とヒット・ソングと、大事な彼女
 一九五〇年代のことを覚えているかい、とぼくがぼくにきく。覚えているさ、とぼくは答える。覚えているよ。たとえば、どんなことを?  ほんの少年でしかなかったのだが、記憶の奥深くまで入りこみ、いまもそこにとどまっている楽しい…
2015.12.10
西陽の当たる家
 僕は西陽の当たる家が好きだ。午後になったら自分の家は西陽を受けとめてほしい。そしていくつかの部屋には西陽が射しこんでほしい。これまで僕はいろんな場所でさまざまな家に住み、いくつもの部屋を自分の場所として使ってきた。しか…
2015.12.9
一度だけ読んだハメット
 僕はハメットを一度だけ読んだことがある。短編をひとつ、しかも翻訳された日本語で。それはいまから二十八、九年も前のことだ。『マンハント』というアメリカの雑誌の日本語版が毎月刊行されていて、その頃の僕はおそらくその雑誌に雑…
2015.12.8
イマジン、のひと言につきた
 ジョン・レノンの名前を見たり聞いたり、あるいは彼についてふとなにかを思ったりするとき、僕はまっ先に頭に思い浮かべるのは、一点の絵だ。ジョンがまだリヴァプールでアート・スクールの学生だった頃、同級の女性がジョンの肖像画を…
2015.12.7
チャタヌーガ・チューチュー
縦書き
 朝のまだ早い時間なのに、居間はもう暑かった。陽がさしこんだりはしないのだが、むっとするような空気がこもっている。  新聞を持った徳一は、居間からキチンへ歩いた。  キチンは北側にあり、この小さな家のなかでは、たいていの…
2015.12.6
ストーリーは銀行に預金してある
 ドーナツの店のカウンターで、僕はドーナツを食べながらコーヒーを飲んでいた。隣りにすわった男性が話しかけてきた。いつもの顔なじみに、ひょいと世間話をむけるのとおなじ調子で、 「やっこさんは、いい大統領だよ。俺は気にいって…
2015.12.5
ドーナツの穴が残っている皿
 僕の記憶が正しければ、僕はこれまでにドーナツの穴を二度、食べたことがある。ドーナツではなく、そのドーナツの穴だ。あの穴は、ちょっとした工夫によっては、食べることが出来る。  僕が最初に食べたドーナツの穴は、子供の頃、友…