953編公開中。 今を映す手鏡のように
2016.3.6
一九四五年秋、民主主義の始まり
 仕事の現場で、珍しく、久しぶりに、同世代の男性と知り合った。落ち着いたスーツにネクタイ、やや白髪の紳士だ。見た目での年齢の見当は僕にはつけがたかったが、太平洋戦争に日本が大敗戦した年の四月に、小学校一 年生になったとい…
2016.3.5
ジェーン・フォンダというアメリカ女性の場合
 映画『黄昏』のなかに、ジェーン・フォンダがバックフリップをやってみせるシーンがある。バックフリップ、つまり、背面回転飛びこみだ。ヘンリー・フォンダが演じている父親を相手に、彼の娘役のジェーンが言い争いをし、激しく感情を…
2016.3.4
彼女の部屋の、ジャズのLP
 ぼくが彼女にはじめて会ったとき、ぼくはまだ少年であり、彼女は五歳年上の大人の女性だった。すっきりと成熟をとげた、いい雰囲気をたたえた、優しい、そして芯のある女性だった。  彼女と知り合ったのは、当時のぼくの自宅から歩い…
2016.3.2
女性たちがニューヨークへ消えていく
 ぼくの身辺から、女性の友人たちが次々に消えていく。十七年まえから現在にいたるまでのあいだに、七人の女性の友人たちが、いなくなった。七人ともすべて、東京を捨ててニューヨークへいってしまったのだ。  十七年まえに、ぼくの女…
2016.3.1
カーメン・キャヴァレロ(3)
 一九六五年、昭和四十年、十二月、キャヴァレロは三度目の来日を果たした。それに先がけて、『カーメン・キャヴァレロと二人の世界』というLPが日本で発売された。昔のヒット歌謡曲三曲に、六〇年代なかばの日本でヒットしていた歌謡…
2016.2.29
カーメン・キャヴァレロ(2)
 カーメン・キャヴァレロのLPが日本で初めて発売されたのは、映画『愛情物語』が公開される以前、つまり一九五六年より前のことではないはずだ、と僕は推測している。『愛情物語』のサウンド・トラック・アルバムの、国内におけるおそ…
2016.2.28
カーメン・キャヴァレロ(1)
 一九七四年のたしか春だったと思う、僕はFM局で二時間のラジオ番組のホストのような役を、仕事の一部分として始めた。週に一度のこの番組、『気まぐれ飛行船』は、それから十三年間、続いた。その十三年間の前半にひとり、そして後半…
2016.2.27
青空とカレーライス
 日本では「私の青空」として知られている「マイ・ブルー・ヘヴン」という歌は、一九二七年のアメリカに登場してヒット・ソングとなった。アカデミー賞が設立され、ベーブ・ルースがニューヨーク・ヤンキーズで六十本のホームランを打っ…
2016.2.26
町にまだレコード店があった頃(3)
 中古のレコードを骨董市のようなところで買う体験を一度だけしてみたい、と僕はかねてより思っていた。僕はコレクターではないし、掘り出し物との遭遇に情熱を注ぐタイプでもない。だから体験は一度でいい。川越の成田山別院というお寺…
2016.2.25
町にまだレコード店があった頃(2)
 海原千里・万里のLPも残っていた。名前にひかれるところもあるが、十二曲のうち八曲までがいわゆる大阪ものであることから、僕はこのLPを買ったのだ、といま僕は推測する。大阪ものへの興味は、フランク永井に触発された。「大阪ぐ…
2016.2.24
町にまだレコード店があった頃(1)
 町にまだレコード店があった頃、そしてそれらのレコード店でLPをしきりに買っていた頃、僕はときどき歌謡曲のLPも買った。かつて全音の『歌謡曲全集』で見つけて気に入ったいくつもの歌のタイトルを、僕は記憶していた。レコード店…