884編公開中。 今を映す手鏡のように
1979年 の一覧
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2016.6.5
雨と霧と雲と
 彼は一年にすくなくとも一度は、オートバイで雨のなかを走り、ずぶ濡れになりたいと感じていて、ほとんどいつも、その感じているとおりにしている。春おそくから夏の終わりまでの季節にかぎられてくるけれども、どしゃ降りの雨のなかで…
2016.5.25
故郷へ帰りたい
 高速道路にあがると、都会の匂いがいっそう強く全身に感じられた。  初夏の快晴の日だ。だが、都会は薄黄色いスモッグにおおわれていた。せっかくの青空は、そのスモッグにさえぎられ、頭上のほんのせまい部分がうっすらと青いだけだ…
2016.4.19
アイダホ州のジャガイモ
 アメリカの北西部、アイダホ州の南部をスネーク河が流れている。東から西へゆるやかなカーブを描いて流れていて、この河を中心にした南部アイダホの平原が、アイダホの特産的な農作物とて知られている、ジャガイモの産地だ。  平原が…
2016.3.16
深夜の地獄めぐり
 深夜の東京の、主として高速道路をオートバイで走りまわることを、彼は地獄めぐりと呼んでいる。なぜ、深夜に、地獄をめぐるのか。  彼の言い草は、こうだった。 「夜中なら道路に車がつかえてないから、事故のとき救急車も早く来て…
2016.3.15
カウボーイ・ブーツ
 アメリカの旅でいきずりに親しくなった初老のカウボーイ。ひとりのカウボーイとして徹底的に年季をつんだ彼がはいていた、カウボーイブーツ。あのブーツを、ぼくはいつまでも忘れないだろう。  あのブーツは、あらゆる形容や描写の…
2016.3.14
4サイクル・ツイン
 東北、常磐、奥羽、信越などの地方をひと夏かけて自動車で走りまわったのは素敵だった。なんの目的もない旅だった。大好きな夏のなかで、気ままに自動車で走り、ディスカバー・ジャパンではないけれど、田舎の景色や人情に触れては、単…
2016.2.8
オートミールの朝食
 子供のころ、朝食にオートミールをよく食べさせられた。ぼくが子供のころには、日本のどこをさがしてもオートミールなんてなかったのだが、いまではたいていのスーパーで売っている。  ドロドロのおかゆのように出来あがった熱いのを…
2016.2.6
トーストにベーコン・アンド・エッグス、そして紅茶
 トーストにベーコン・アンド・エッグス、オレンジ・ジュースと熱い紅茶、そして日本ではふつうクレソンと呼ばれている草をひとつかみ。こんな朝食も悪くない。ぼくは好きだ。非常にしばしば、朝の8時ごろ、こんな朝食をたべる。  ま…
2016.2.5
少年食物誌
 瀬戸内海に面した小さな港から内陸にむかって、一本の川がのびていた。港から入江に入りこみ、山陽本線の鉄橋をくぐると、その川の両側は石垣のスロープになり、スロープの上には漁村とも農村ともつかない不思議なたたずまいで、瀬戸内…
2016.1.22
ジャニス、たしかに人生はこんなものなんだ 4
縦書き
|1|2|3| ー 4 ー  楽屋のとなりの出演者控え室は、コンクリートの四角い部屋だった。壁には白いペイントが吹きつけてあり、天井に蛍光灯が二列にともっていた。いっぽうの壁に、大きな鏡があった。  ジャニスは、折りたた…
2016.1.21
ジャニス、たしかに人生はこんなものなんだ 3
縦書き
|1|2| ー 3 ー  助手席の回転椅子をうしろにむけ、ジャニスは体を投げ出すようにしてすわっていた。高いヘッド・レストとひじかけが両側についたそのキャプテンズ・チェアは、こんなふうにすわると居心地がいい。  椅子の背…
2016.1.20
ジャニス、たしかに人生はこんなものなんだ 2
縦書き
|1| ー 2 ー 「故郷のポート・アーサーで、私はグレード・スクールの九年生ごろまでは、けっこう幸せだったのよ。幼いあいだは、どんな子供も、おんなじようなもんでしょ。自分の意見や考え方を持ちはじめる以前の年齢だから、大…
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