884編公開中。 今を映す手鏡のように
季節 の一覧
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2016.7.30
五つの夏の物語|5
 七月の最後の週、あるいは八月の第一週、つまり夏のちょうどまんなか、ものの見事に快晴の日に一日でいいから海岸で過ごし、夏を全身に受けとめておきたい。後日のための伏線として。  特別なことはいっさいしなくていい。と言うより…
2016.7.26
彼の後輪が滑った──4(夏)
 彼女は、オートバイでひとり、旅に出る。一日に走る距離は、それまでの経験から判断してきめる。そのときの天候によっても、季節によっても、あるいは、自分の気持ちによっても、一日に走る距離は、微妙にちがってくる。  充分に走り…
2016.6.5
雨と霧と雲と
 彼は一年にすくなくとも一度は、オートバイで雨のなかを走り、ずぶ濡れになりたいと感じていて、ほとんどいつも、その感じているとおりにしている。春おそくから夏の終わりまでの季節にかぎられてくるけれども、どしゃ降りの雨のなかで…
2016.4.20
道路への関心と小説
 『佐多への道』という本を何年かまえに僕は英語で読んだ。アラン・ブースというイギリスの人が、北海道の宗谷岬から九州の佐多岬まで、出来るだけ都市化されていない田舎の部分を選んで、ひとりで歩きとおした紀行文だ。歩くということ…
2016.3.9
オン・ロード
 道路は、たしかに、きわめて日常的で陳腐な光景だ。  だが、ひとたびオートバイにまたがって走れば、魔法のサーキットになる。  道路がただ道路でしかない人に、魔法のサーキットについていくら語っても、らちはあかない。  しか…
2016.2.13
四季のひとめぐり
「今日は記念日なのよ」  彼女が言った。 「そうだね」  彼が答えた。 「自覚してましたか」 「ちょうど一年だ。昨年の今日、僕たちは知り合った」 「あれから一年なのね」  平凡な言いかたに彼女は優しい感慨をこめた。 「一…
2016.1.24
くっきりとした輪郭としての寒い季節
 今年の冬は寒い、という予報はどうやらはずれたようだ。冬の寒さ、というものを僕は期待していたのだが。たとえばこの正月は、まるで寒くなかった。寒い、と思った日が、この冬はまだ一度もない。この冬、というような言いかたが、すで…
2015.12.24
あの夜はホワイト・クリスマス
 あの年のクリスマス・イヴには、彼はオートバイで山のなかを走っていた。夜のまだ早い時間に峠道に入り、対向車も後続車もまったくない、彼だけのワインディング・ロードを気分よく走っていた。猛烈に寒いのだが、ときたまオートバイを…
2015.12.22
知らぬ町 雨の一日 冬至なり
 季節感を楽しむために日本はある、と僕は信じている。日本は季節変化の国だ。1年365日のなかで、四つのまったく異なった季節が、完璧にひとめぐりする。世のなかは三日見ぬ間の桜かな、という言葉がある。これを文字どおりに解釈す…
2015.11.29
手紙
 ぼくのアメリカ人の友人が仕事で日本にやって来て、半年ちかく滞在した。豊島園のちかくの、キャべツ畑のなかの安いアパートに入り、毎日ほんとうに元気に飛び歩いて、仕事をこなしていた。ぼくも彼も多忙な日がつづき、ゆっくり会うこ…
2015.11.4
深まりゆく秋です
 たとえば、深まりゆく秋という日本の季節感のなかをオートバイでツーリングしていてめぐりあう食べもの、飲みものについてすこし書いてみようかなと考え、過去の体験をあれこれよみがえらせていて、ひとつ面白いことに気づいた。日本の…
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