884編公開中。 今を映す手鏡のように
エッセイ・コレクション の一覧
2017.6.20
『カサブランカ』を観て、読んで、聴いた日
縦書き
 幼少の頃からはじまって、小学生、中学生、高校生をへて大学生と、どの段階でも、僕は映画を映画館で観てきた。大人になってからもそうだし、いまでもたまには映画館で観ている。  たまに映画館でも観るけれど、ほとんどの場合は、ヴ…
2017.6.8
白い、半袖のシャツ
縦書き
「あれから、十二年?」  と、彼女がきいた。 「たいしたこと、ないよ」  ぼくが、答えた。 「そうね。それほどの時間ではないわね」  十二年が経過しても、ぼくは昔のままだ。彼女も、変化のない部分はそのままだが、変化をきた…
2017.6.1
テキーラの陽が昇る
縦書き
 会議は二時間、続いた。十五分の休憩があり、会議は再開された。それから一時間が経過していた。さらに一時間は、続くはずだ。この会議をとりしきっている男性は、会議のためにこのような時間のとりかたをするのが、好みだ。休憩をあい…
2017.5.31
荒野の風はサンドペーパー
縦書き
 早朝から、かんかん照りだった。  ついになにかが巨大に狂ったのではないかと誰もが思うような、まっ青な空から、地面のあらゆる部分にむけて、強烈な陽ざしがまっすぐに射しこまれつづけた。  ぼくがオートバイで宿を出たとき、ま…
2017.5.30
彼の後輪が滑った──(9)
縦書き
 峠道を登りつくし、道路が平坦になったところで、ぼくは転倒した。見ている人は、いなかった。ほかにオートバイも自動車も、いなかった。ぼくは、いつも、ひとりで転倒する。記憶しているほとんどの場合、転倒するのはひとりのときだ。…
2017.5.26
ほろりと泣いて正解
縦書き
 もう何年かまえのことになるが、季節はちょうどいまごろだった。  よく晴れた明るい日の夕方、ぼくは、当時ひとりで住んでいた家の玄関ポーチのデッキ・チェアにすわり、楽譜を読んでいた。アメリカの、一九三〇年代、四〇年代に流行…
2017.5.21
『彼のオートバイ、彼女の島』
縦書き
 これが文庫本になったのは一九八〇年のことだ。それ以前に単行本で出ていた時期が、三年はあったのではないか。そしてそれは『野性時代』に連載したものだ。とすると、書いたのは一九七五、六年だったということになる。単行本で出たと…
2017.5.20
『ときには星の下で眠る』
縦書き
 一九八〇年までさかのぼると、『ときには星の下で眠る』という、中編よりやや分量の多い小説がある。高校の同級生だった親しいオートバイ仲間が、ある年の秋、高原に集まって来て再会する、という単純なストーリーだということは記憶し…
2017.5.19
『幸せは白いTシャツ』
縦書き
 一九九四年の夏に出た『狙撃者がいる』が、いまのところ僕にとってもっとも新しい角川文庫だ。そこから『湾岸道路』までさかのぼるあいだに、五十七冊の文庫がならんでいる。そして『湾岸道路』からいちばん最初の角川文庫である、『ぼ…