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評論・エッセイ

青空とカレーライス

 日本では「私の青空」として知られている「マイ・ブルー・ヘヴン」という歌は、一九二七年のアメリカに登場してヒット・ソングとなった。アカデミー賞が設立され、ベーブ・ルースがニューヨーク・ヤンキーズで六十本のホームランを打った年だ。大衆社会はすでに始まっていたが社会制度に不備は多く、それが二年後に始まった大恐慌ですべてはいったんつぶれるというような時代を、この歌はなんらかのかたちで写し取っていたはずだ。労働力の再生産の場である家庭を賛美しているという意味では、労働歌だったと言ってもいい。
 一九二七年は昭和二年、関東大震災か…

底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年
▼初出
朝日新聞2005年2月18日

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