VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

ロングボードの宇宙

 ロングボードにまたがって、ぼくはいま沖にいる。波をつかまえるために位置をとり、波を待っている。太平洋をうねってくる波がたたえている、生きた命のようなエネルギーをつかまえるには、この重いロングボードがいちばんいい。
 両手に海の水をすくって顔にかけ、空をあおいでみる。青い空に強く明るい陽ざしがいっぱいだ。陽の位置が高くなりつつある。早朝からここにいて波をつかまえているぼくは、潮のせいで陽ざしは目が痛い。
 青い空は、底なしの宇宙空間だ。頭上いっぱいに、空はすっぽりと抜けきって、無限に深い。その宇宙空間に、太…

底本:『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年

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