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これ以上なにも言うことはない

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 ロング・ノーズ・プライアー。ニッパー。そして、カッター部分のついたペンチ。この三点だ。セットではなく、ぼくはひとつずつ手に入れた。西ドイツ製だ。高級なものではないと思うが、出来ばえは美しい。どれもみな、たいへんな働き者だ。手に入れてから、この三つがいったいどれだけ役に立ってくれただろう。

 握りの部分は、ぼくの手のなかにしっくりとおさまる。光った金属の部分は、機能とそれにともなう形とを追いつめていけば、この程度の美しさはたやすく達成出来ると思う。この金属部分に対する、握りの部分の材質、感触、色、そして形状が、ぜんたいの美しさを作り出すと同時に、それを増幅してもいる。赤の色調がいいし、なかば透明で内部が見えるのもいい。指のストッパーの形がうれしい。外観がこれだけ美しく、しかもきわめて有能なのだから、これ以上なにも言うことはない。

(2016年9月26日掲載、『彼らと愉快に過ごすー僕の好きな道具について』1987年所収)

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1987年 『彼らと愉快に過ごすー僕の好きな道具について』 ドイツ 工具 道具
2016年9月26日 05:30
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