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どうだ、この美しさを見てくれ

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 ドゥミタス一杯分だけのコーヒーをつくるコーヒーメーカーだ。出来ぐあいをよく見てほしい。ぼくはただみつけて買ってきただけだが、このくらいよく出来ていると、どうだ、この美しさを見てくれ、と自慢したくなる。イタリーのアルプ社というメーカーがつくっている。このメーカーは、ヨーロッパ有数の、ステインレス製調理器具のメーカーだそうだ。
 
 ぜんたいの構造は、おおまかに言うと、ひとつのポットだ。そのポットは、上下ふたつに分かれている。下のポットには、水を入れる。火にかけると、このなかで水が沸騰する。だから、下のポットはボイラーと呼んでもいい。ボイラーに水を規定の量だけ入れ、ストレーナーをはめこむ。ストレーナーには、コーヒーの粉を入れる。出来るだけ細かく挽いた粉がいいようだ。濃いコーヒーが好みなら、粉を多くすればいい。上のポットをボイラーにはめこみ、しっかりと固定する。火にかけると、水はすぐに沸騰する。熱湯はストレーナー下部の細い管をとおってストレーナーに噴きあがり、コーヒーの粉のなかを瞬時に通過し、コーヒーを抽出する。そして、上のポットのサイフォンを経て、出来あがった熱いコーヒーがポットのなかに注ぎこまれていく。

 機能も造形も、ほぼ完全に完成されていると言っていい。ぼくはいつも、もっと荒っぽい方法でコーヒーをいれている。このコーヒー・メーカーを、ぼくは一種の彫刻として手に入れてみた。彫刻としても、逸品だ。実用品としていつも使いたければ、3カップ用を買うといい。6カップ用もある。1カップ用のボイラーの底は、直径が73ミリだ。普通のガス・レンジにはうまく乗らないはずだとぼくは思う。それに、ガスレンジの炎の、外側の列は、ボイラーの外へ完全にはみ出すだろう。1カップ用を実用にしたければ、熱源を工夫しなくてはいけない。

(2016年9月9日掲載、『彼らと愉快に過ごすー僕の好きな道具について』1987年所収)

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1987年 『彼らと愉快に過ごすー僕の好きな道具について』 イタリア コーヒー コーヒー・メーカー 道具
2016年9月9日 05:30
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