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なぜアメリカに「NO!」というのか?(2)|エルヴィスから始まった

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全2回|

『プロヴォ』という地下新聞には、次のようなボイコット宣言の投書が、のせられた。

 「ヴェトナムに平和がもたらされるまで、私は新たに自動車を買わないことをここに宣言します。平和のための宣言委員会がうしろだてとなっているこの運動は、全米にキャンペーンされています。ヴェトナム戦争にとってアメリカの自動車産業は欠かすことができないのです。委員会の目的は、新車を買わないという一〇万名の署名をあつめ、戦争遂行に対する強い反対がアメリカ国内に存在することを自動車産業に示し、この反対勢力が、自動車産業にとって威嚇になりうる事実を、彼らに示すことです。賛成の方は、署名をそえて、平和のための宣言委員会、3237ベンダ・ストリート、ロサンゼルス、カリフォルニア、90028に送ってください」

 パン・アメリカン航空も、軍事輸送で莫大な利益をあげている事実を理由に、ボイコットの対象にあげられている。国内・国際線の両方で、座席の空《から》予約をしてパン・アメリカンを困らせようという計画だ。

 ヴェトナムの軍事費の足しにするため、それまでは三パーセントでしかも一九六九年には全廃されることになっていた電話税が、一九六六年四月、恒久的に一〇パーセントにひきあげられた。この税金に反対の意志表示をし、おさめないでいると、電話会社によって電話をとめられてしまう。しかし、法律を詳しく調べると、電話会社にそのような権限はまったくなく、税金を払う払わないは個人と国税庁とのたたかいになる事実をつきとめた人がいて、その人は、広告費をつのって新聞にスペースを買い、そのことを詳しく説明する文章をのせた。

 アメリカ市民ひとりの年間の税金のうち七〇パーセントほどが軍事にまわされ、そのうちのさらに二二パーセントが直接にヴェトナム戦争に関係しているというデータを新聞に発表した人もいる。この数字にのっとって、ジョーン・バイエズが「私は私に課せられた税金のうち七〇パーセントを支払わないことにしました」と、手紙を書いて国税庁に送った。しかし、払う払わないにかかわらず、政府がその気になりさえすれば、バイエズ個人の税金は、法に触れることなく自動的に、彼女の歌手活動に対する報酬から取り立てることができる。バイエズ自身がこのことは知っているはずであり、このへんが、資本主義のなかにいる人たちの、結局はどうにもならない限界となる。個人が、どのような考えに支えられてどう行動するかが、今ほど重要なときはない。

 次に全文を紹介するのは、バークレーのアンダグランド・パーパー『バークレー・バーブ』(一九六七年九月二二日付)にのせられた、デヴィッド・マクレイノルズによる、アメリカの米兵にあてたオープン・レターだ。

「あなたがた兵士たちの心をつかまえるのはむずかしい。徴兵局のドアを入っていってしまうと、もうあなたがたにじっくりと話しをするのさえ、ほとんど不可能になってしまう。さて、とにかくあなたがたは、アメリカ軍隊内部の人たちだ。国内のどこかの基地で基本訓練をうけている最中かもしれない。あるいはドイツあたりに駐屯しているのかもしれない。ひょっとしたら、ヴェトナムへ出動する命令を受けとったところかもしれない。すでにヴェトナムにいる身かもしれない。

 どこにいても、私のこの手紙があなたがたの目に触れるといいのだが。アメリカのアンダグランド新聞のすべて、それにカナダとイギリス、そして日本の友人たちにも、この手紙のコピーを送った。もしこの手紙の内容に反対ならば、反戦者連盟(5ビークマン・ストリート、NYC10038)気付で私あてに手紙をもらえないだろうか。私がどこでまちがっているのか、どのような点で私の意見に反対なのか、知らせてほしい。アメリカ政府によって私たちの連盟が解散させられないかぎり、私は、あなたがたからの手紙に返事を書く。もし私のこの手紙に賛成ならば、ほかの人たちにも読ませてあげてくれ。もしあなたがまだアメリカ国内にいるのなら、この手紙をヴェトナムに出動したあなたの友人に送ってあげてくれないか。

 あなたがたのような“憂国者”たちは、反戦運動はあなたがたにたてつく運動だと言っている。私たちがあなたがたを支持していない、とあなたがたは思っているにちがいない。私たちみんながヴェトナムに送られたり銃弾を浴びせられたりあるいはすくなくとも、あなたがたが戦場にいて私たちは国内で安全に反戦運動をやっているということに対して私たちが恥を覚えるようにならなければいけないと、あなたがたは考えるだろう。アメリカ国旗を焼いたり徴兵カードに火をつけたりする話しを聞いているだろうし、そのようなことをする人たちを、あなたがたは共産主義の手さきだと考えるのだろう。しかし、そのような考えは、まったくまちがっている。

 冷静に考えてみよう。

 徴兵カードを焼けば、焼けるのは一枚の紙きれにしかすぎない。国旗を燃しても、燃えるのはただの布だ。しかし、ナパームを落せば、人間が焼けてしまう。徴兵カードは、焼かれるときにひどい苦痛を覚えるだろうか。国旗は、燃えながら苦しむとあなたは思うか。しかし、人間の子供は、焼かれれば明らかに苦痛を覚える。徴兵カードを焼くのと村をひとつなくしてしまうのと、どちらがよりいけないことだろうか。

 あなたがたの“政治教育”を担当している将校たちは、反戦運動などはほんのひと握りの、しかも髪を長くのばした人たちがやっているにすぎない、と言っただろう。(髪がなんの関係を反戦と持ちうるだろうか。イエスの髪は長かったし、ジョージ・ワシントンは、飾り粉をふりかけた、長いかずらをつけていた。)アメリカ国民のほとんどがこの戦争を支持している、と教えられただろう。とんでもないことだ。今年の四月一五日には、三〇万以上の人たちが、戦争に反対してニューヨークでデモ行進をおこなった。サンフランシスコでは、八万人があつまった。合計すると四〇万人ちかくなる。私たちは暴力などいっさいふるわず、平和に行進した。この二週間あとで、四月二九日、戦争支持のデモンストレーションを“憂国者”たちがおこなった。カーディナル・スペルマン、ザ・ジョン・バーチ・ソサエティ、『ニューヨーク・デイリー・ニューズ』紙などが、全面的に支持した。“正真正銘の憂国者”たちが二五万人は集るだろうと、主催者たちは言っていた。だが、実際にやってきた人の数は、一万人たらずだった。三週間あとに、再びこころみられた。五月二〇日、ニューヨークで、“アメリカ兵士たち”を支持するデモがおこなわれた。やってきたのは、七万五〇〇〇以下の人たちだった。七万五〇〇〇人といえばたいへんな数だが、四〇万人とは比較にならない。

 反戦デモには、共産主義者たちがまじっていた、とあなたがたを教育する将校は言うだろう。たしかに、共産主義者は、いた。しかし、共産主義者たち以上に多かったのは、カトリックの牧師や尼さんたちだった。

 戦争を支持するデモに、あなたがたを支持するために、どのような種類の人が参加したかを、知っているだろうか。アメリカ在郷軍人団の、腹の突き出た酔いどれなのだ。自由を盲信するあまり、彼らは、自分と意見のちがう人たちをすべて、殴ったのだ。五月二〇日の“憂国者のデモ”で、黒人女性が〈ヴェトナムの人たちは私をクロンボとは呼ばない〉と書いたプラカードを持って歩いていた。アメリカ在郷軍人団の制服を着た男が、彼女を殴り、ほかに二〇名以上の男たち——男、という呼び名すらもったいない——が、ひとりの黒人女性を殴り倒すことに参加したのだ。警察はなにもしなかった。あなたがたを助けると同時に平和をもうちたてようとはかる若者たちも、このデモで行進した。アメリカの国旗をかかげていた。どういうことがおこったと思うか。新聞の記事を引用しよう。〈大人たちが、自分の娘くらいの年齢の女性を、さかんに殴り、蹴りとばした。アメリカの国旗を彼女たちの手からもぎとり、小さくひきちぎった〉

 このようなかたちでの支持を、あなたがたは受けたいのか。女や子供を殴りつけてなされる支持を。

 六月二三日にジョンソン大統領がロサンゼルスにやってきたとき、彼を出むかえたのは、民主党政治家がほんのすこしと、民主党に大きく肩入れしている人たちだけだった。しかし、ジョンソンの戦争に反対をとなえるためにつめかけていた人は一万人以上もいた。警官は彼らの頭をかち割り、女・子供を殴り、戦争に反対して平和のうちに行進しようとしたかどで人々を病院に送りこんだのだ。八月六日、やはりロサンゼルスで、二万人の人たちが、戦争に反対する行進をおこなっている。

 私たちは、この戦争を支持しない。アメリカ本土の人たちは、大部分が、この戦争を望んでいない。ろくでもない戦争なのだ。私たちは、大統領をも支持しない。ジョンソンはひどい嘘つきだと思う。しかし、あなたがたは、私たちは、支持する。あなたがたはどちらをとるのか——ニクソンやジョンソンがあたえてくれる支持か、それとも、私たちの支持か。ニクソンやジョンソンは、あなたがたが戦場に出て人を殺すことを望んでいる。そして、あなたがたが死ぬことすら、望んでいる。絶対に自らが出かけておこなうことはないのだが、自分たちにかわってやっていてくれているあなたがたを“支持”するのだ。私たちは、あなたがたが人を殺さないことを望み、また、死なないことを望む。生きて無事に国へ帰ってきてほしい。木の箱に詰められて帰ってくることのないように。どちらの支持を、あなたがたは、とるのか。

 冷静に考えてほしい。あなた自身の命だ。命は、ひとつしかない。私たちは、あなたがたにたてついているわけではない。ヴェトナムで戦死した兵士の実家に電話がかかり、いい気味だ、死んでよかった、などと言われたという話しを新聞で読んだ。ヴェトナムで戦死した青年の両親にそのようなことを言えるほどに病んだ人がいるとは、信じられない。そんな電話がほんとにあったのだろうか。あなたがたをして私たちに対立させるためにしくまれた嘘の話しではないのだろうか。あなたがたの誰が戦死しても、私たちは悲しい。アメリカの戦闘機が落されるたびによろこんだりはしない。私たちの敵は、あなたがたではない。“ヴェトコン”もまた、敵ではない。ジョンソンですら、ほんとの意味では、敵ではない。人を殺したり苦痛をあたえたりすることが、敵なのだ。言葉をかえよう——あなたがたの射つ弾が、すべて的をはずれるといい。ヴェトコンが発射する迫撃砲は、すべて不発に終るとよい。

 あなたがたのなかには、ヴェトナムの人民がアメリカ兵の存在を希望しているのだ、と言う人がいるかもしれない。冗談ではない。自動ライフルを持っている兵士にむかって、正直に、あなたを嫌悪する、と言える人がどこにいるというのか。私はサイゴンまでいって見てきた。アメリカ軍の建物は、ひとつのこらず、鉄条網でかこわれ、サンドバッグがつまれ、歩哨が立てられていた。なぜか。あなたがたが、そこで望まれていないからだ。あなたがたは、ヴェトナムを“解放”しているのではない。ただ占領しているだけだ。あなたがたが、あるひとつの村を“解放”したとき、村人は、微笑と花であなたがたをむかえるだろうか。少女たちが接吻をしてくれるか。カネを払わずに当地の女性と寝ることが、一度でもできたか。カネぬきで、当地の女性から、好きよ、と言われたことがあるだろうか。バーで酒を飲み、正当な金額を払ったことがあるのか。

 話題をかえよう。ジョージ・ハミルトンが徴兵されないのになぜあなたがたが戦争に出なければいけないのか、考えてみたことがあるか。なぜ、パトリック・ヌージェントが、ヴェトナムではなく予備兵役で安全にしていられるかについて、考えてみたことはないのか。上院議員の息子(あるいは、孫でもいい)や、有力な実業家の息子が、あなたとおなじ部隊にいるだろうか。金持ちの息子や政治家の息子で、実戦にかり出された例を聞いたことがあるか。この戦争がそんなに重要ならば、なぜ金持ちの息子たちも、参画しないのか。そして、戦死しないのか。

 あなたがたの上官がこの手紙を読んだならこの手紙は破壊的な行為のひとつだと言うだろう。しかし“破壊的な”とは、いったいどういうことなのだろうか。陸軍准将ロバート・ヒューズは、破壊的だろうか。五月三〇日に、彼はつぎのように言った。〈専制的な政府が支持している非人道的な戦争を我々は遂行している。専制政府は道徳的にだめになったリーダーにひきいられていて、このような悲劇的な戦争からはいますぐにでも我々は手をひくべきだ〉 かつての海兵隊司令官でいまは陸軍大将のデヴィッド・シャウプはどうなのか。二月二一日に、彼は次のような発言をおこなっている。〈我々のいまわしい、血にまみれてドルによごれた手を、抑圧され搾取されつづけた人民からひきあげれば、この人民たちは、自分たちの力で解決の方法をみつけるだろう。東南アジア全域の現在および未来における安全と独立に関して、アメリカ人が生命を賭けたり傷ついたりしなければならないということは絶対にない〉 シャウプ大将は、名誉勲章を持っている。ヒューズ准将はシルヴァ・スターと、オーク・リーフ・クラスタのブロンズ・スターだ。それに、名誉負傷章だ。ジョンソン大統領がヴェトナムの戦場でどんな勲章を手に入れたというのか。

 ヴェトコンがいかに残忍であるか、また、私たちがヴェトコン全員を英雄にし、アメリカ兵をみんな一種の犯罪者みたいに扱っているではないかということに関して、二、三人の人たちから私は電話をもらったことがある。話しをはっきりさせよう。ヴェトコンすべてが英雄だとも聖人だとも、私は考えていない。人の喉仏を切り裂き、民間人を殺すことは私も知っている。このようなことは、よくないことなのだ。しかし、最も多く殺しているのは、ヴェトコンだろうか、それとも、アメリカ軍だろうか。この一〇年間に、ヴェトコンは一万人ほどの民間人を殺した。その一万名のうちの大部分は、現地の腐敗した官吏たちだ。このような殺人を、私は否定する。おなじ一〇年間に、私たちアメリカは、ヴェトナムで五〇万人以上の人間を殺してきた。どちらをより強く否定すべきだろう。ヴェトコンか、それとも、アメリカか。ヴェトコンは、あるひとつの村にしのびこみ、腐敗した指導者の喉を切り裂く。いけないことだ。たとえ指導者としてだめになってはいても、人間は人間で、殺されるべきではないのだから。しかし、村の上から爆撃機で爆弾をばらまき、村の人たちすべてを殺してしまうのは、さらにいけないことだ。そうは思わないか。

 さらに、もうひとつ、微妙なことなのだが、考えなければいけないことがある。軍隊はあなたがたを男にするという。冗談ではない。軍隊は、あなたがたを、ロボットにするだけなのだ。殺人する機械。男とは、なにか。自分の気に入らないプラカードを持っていたからという理由で黒人女性を殴りつける、在郷軍人の酔っ払いが、男なのか。人間の腹に銃剣を突き立てる行為に、ほんとに男らしい部分があるのだろうか。殺人に“男らしい”部分など、絶対にない。人間がやるべきことは、子供をつくることで、殺すことではない。ほんとに男ならば、平和行進に参加している女性を殴ったりする必要はない。男なら、やさしくできるはずだ。やさしくすることができないうちは、まだ男ではない。ペニスや銃ゆえに男になれるのではない。ペニスを銃と混同するようになると、もはや重症だ。銃を射てば人が死に、ペニスからは、子供の命が発射される。子供をつくれない男が、自分の女性に対してやさしくできない男が、銃を射ちたがるのだ。男としてのほんとの仕事から逃げている人たちが、戦争をするのだ。

 当面の話しにもどろう。人を殺すのは、いけないことだ。殺されるほうにまわってみれば、わかるだろう。反戦運動はあなたがたにたてつく運動だ、と上官たちは言うにちがいない。そうではない。私たちはあなたがたを支持し、戦争に反対しているのだ。あなたがたをヴェトナムから無事に帰国させ、仕事、学校、玉突き場、あるいは恋人のところへ、再び帰れるように、私たちはしてあげようとはかっているのだ。私たちは、あなたがたに反対しているのではない。いま、あなたがたは、軍隊にいる。これからのあなたがたに、いかなる道がのこされているのか。

 事実を、冷静にみつめなくてはいけない。銃を射つまえに、この戦争についての正しい認識を持たなくてはいけない。この戦争についての正しい事実をのべているパンフレットを手に入れる権利が、あなたがたにはある。私たちに請求してくれれば、すぐに送る。私たちのパンフレットだけではなく、国防省に手紙を書き、政府がわのパンフレットも、手に入れてみるといい。両方をみくらべたうえで、どちらが正しいか、自分で決めてほしい。もし、国防省やジョンソンのほうが正しいと思うなら、戦争をするがよい。

 国防省やジョンソンが嘘をついていて、私たちのほうが正しいと考えるなら、戦争をやめなければいけない。人間であることの義務のひとつは、自分がこれは正しいと信じることを実行することだ。上官に言われたことをただそのとおりにやるだけではだめだ。真の愛国者とは、国家が正しいと考えていることをそのまま実行する人ではなく、国のためにはなにが正しいかを自分で考えて行動する人だ。戦争がまちがっていると考えるならば、支持してはいけない。できることなら、軍隊からぬけ出すことだ。それには、三つの方法がある。

 脱走することができる。アメリカ国内で脱走すれば、あなたが生きているかぎりいつでも、軍はあなたをつかまえ、刑務所に入れることができる。スウェーデンやフランスで脱走すれば、刑務所には入れられないかわりにその国にとどまらなくてはいけない。アメリカに帰ってくれば、必ず逮捕される。ドイツ、フランス、イギリス、あるいはスウェーデンのどこかに恋人がいて、一生をヨーロッパですごしてもいいというなら、そこでの脱走もひとつの方法だろう。『ニューヨーク・タイムズ』によると、ヨーロッパでは、日に六〇名ほどのアメリカ兵が、脱走しているという。

 良心的戦争反対者として除隊させてもらうこともできる。私たちに手紙をくれれば、あなたが法の下で除隊できるかどうか、調べてあげよう。しかし、あまり多くを期待してはいけない。数百名にのぼる兵士たちが、良心的戦争拒否者として除隊を願い出ているが、まだ除隊できずにいる。除隊申請者のほとんど全員に対して、軍は、ノー! と言っている。しかし、申請する権利はある。軍隊にできることは、ノー! と言うことだけなのだ。

 三番目の方法は、これからさき、いっさいの命令にしたがわず、軍法会議をうけ、刑務所に入り、不名誉除隊することだ。これは、つらい。現実に、そうなのだ。しかし、“不名誉除隊”した男たちのすべてが、アメリカの歴史が書きかえられたとき、新たに英雄になるのだ。この戦争で人を殺すことを拒否した英雄だ。ヒトラーの軍隊に入って戦争するのを拒否した男たちは、いま、英雄だ。ヴェトナム戦争でも、おなじことがおこる。一九五六年、ハンガリーの兵士を殺すことを拒否した共産主義兵士を、私たちはたたえる。

 しかし、これからのあなたは、まだ楽ではない。軍隊の刑務所で、六か月から五年の刑に服さなければいけない。しかし、戦場に出るほどの勇気があるならば、刑務所だっておそれることはないだろう。海外にいるアメリカ兵で、この戦争について新たに考えてみたい人がいるなら、反戦者国際連盟、88パーク・アヴェニュー、エンフィールド、ミドルセクス、イングランドに手紙をくれ。あなたの基地にいちばんちかい平和運動の事務所を教えてくれるだろう。

 反戦運動をおこなっている人たちの多くが、軍務不服従を実行するのとおなじくらいの危険をおかしているのだという事実を、あなたに知ってほしい。この一〇月一六日に、徴兵局にカードをかえしにいくことになっている若者たちのことを私は考えている。学生だから兵役につく時期をさきのばしにしてもらえたり、カナダに逃げたりすることが簡単にできるのだが、そうはせずに、逮捕されることはあきらかなのだが徴兵カードをかえそうとしている。なん百という若者たちがそれをやろうとしている。あからさまに闘争するのだ。たいへんに勇気がいる。一〇月一六日、この若者たちは、男になる。ヴェトナムの農民をすくうために、また、あなたがたが人を殺したり殺されたりするのをふせぐために、彼らは、この危険をおかすのだ。やらなくてもいいことなのだが、男としての勇気を持ちあわせているがゆえに、ジョンソンに対して、ノー! と、言えるのだ。

 刑務所に入ることを覚悟している若者たちは、戦争をあなたがたに押しつけようとしているのではない。戦争を支持している人たちは、自分はすでに年をとりすぎているものだから、実戦はすべてあなたにやらせようとしている。私たち平和運動者は、ヴェトコンに味方しているのではない。私たちは、人間の味方なのだ。その人間には、あなたがたも、含まれている。線をこえて、私たちのほうにきて、人間の味方になってはどうか。あなたは刑務所にいくことになるだろうけれど、あなたはそこでひとりではない。

 最後に、あなたがたの決断がどちらになろうと、私はセンチメンタルなことを書いておかなくてはいけない。笑いたければ、笑ってくれていい。私たちは、あなたがたのためにいのっているのだ。あなたがたが誰をも殺さず、また、殺されないことをいのる。戦場にでたら、どうか銃の的をはずしてくれ。私たちは、とことんまであなたがたを支持しているという事実を忘れずにいてほしい。私たちはあなたがたを軍隊から解きはなし、この戦争犯罪から関係を断たせようとしているのだ。男としてなにかをなしとげたければ、すこしずつおだやかに、軍隊をひっくりかえしていこう。文書を配布してくれ。上官の言うことを、あまり真剣になって聞いてはいけない。良いことのために刑務所に入るのは、悪いことのために戦場にでるより、ずっとましなのだ。

 次の詩を、あなたの鉄カブトに、貼りつけておいてほしい。アメリカの偉大な詩人、ケネス・パッチェンの詩だ。

  ここに人間が
  あわれな生き物
  殺してはいけない
  ここに人間が
  つらかったのだ
  この地球で
  だから殺してはいけない

 『バークレー・バーブ』紙は、デヴィッド・マクレイノルズのこのオープン・レターを、無断でかまわないから転載したければしてみてくれ、とアメリカの一般商業新聞や雑誌に、けしかけていた。アンダグランド・ペーパーをのぞいて、このオープン・レターを転載した新聞雑誌は、現在のところ、ひとつもない。

[この項、了]

ぼくはプレスリーが大好き
(初出:『ぼくはプレスリーが大好き』(のちに加筆・改題)1971年、底本:『エルヴィスから始まった』1994年/*青空文庫のテキストを用いて作成しました)

今日の一冊|romancer-books04|『エルヴィスから始まった』

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blog170102|エルヴィスから始まった|ロマンサー文庫04|公開]2016年4月より木曜に掲載してきた『エルヴィスから始まった』(『ぼくはプレスリーが大好き』改題)を電子書籍として無償公開しました。

エルヴィスから始まった

第1章|ミシシッピー州東テュペロ


第2章|心が爆発する


第2章|トータルな体験と目覚め|
   1|ロックンロールは「生き方」だ
   2|ティーンエイジ・アメリカ
   3|いつラジオの音量をあげたか?


第4章|カントリー・ミュージック|
   1|アパラチアのストラデヴァリアス
   2|エレクトリック・ギター
   3|真実としての日常生活
   4|バーミンガムに歩いて帰る
   5|ヒット
   6|マーティン・フラットトップ・テイクオフ


第5章|ブルース|
   1|ブラック・アメリカン
   2|ミスター・ブルース
   3|ブルースマン
   4|アメリカの革命
   5|白人にブルースがうたえるか?


第6章|ロックン・ロールとカウボーイ・ブーツ


第7章|なぜアメリカに「NO!」というのか?


第8章|1960-1970 アメリカ
   1|「いろんなことが同時におこる」ボブ・ディラン
   2|歌になにができたか?
   3|ビートルズはつまらない
   4|単純なものと複雑なもの
   5|ロバート・ジンママン
   6|ヒッピー・ムーヴメント
   7|LSDとマリワナの迷信
   8|FUCK NOW!
   9|フィルモア
  10|ウッドストック
  11|「頭にエサをやれ」(ジェファスン・エアプレーン『ホワイト・ラビット』)
  12|LOVE


第9章|ミシシッピー河により近く


第10章|ELVIS IS BACK


エルヴィス・プレスリーの物語


角川文庫版・あとがき


1960年代 1971年 1994年 『ぼくはプレスリーが大好き』 『エルヴィスから始まった』 ヴェトナム戦争 戦争 第7章「なぜアメリカに「NO!」というのか?」 青空文庫 音楽
2016年5月24日 05:30
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