あの店でコーヒーを飲みたい
あの店でコーヒーを飲みたい、という気持ちを純粋に心のなかで高めて、コーヒーだけのためにわざわざでかけていく店が、いまのぼくには二軒ある。一軒は国内、そしてもう一軒は、国外だ。
国内のほうの店には、簡単にいくことが出来る。もっとも横着ないきかたは、自宅までタクシーに来てもらってそれに乗り、店のすぐ近くまでいく方法だ。これだと、雨の日に傘なしでも、濡れることはない。15分かからないと思う。電車でいっても、ひと駅だ。25分くらいだろうか。
この店で、ぼくは、エスプレッソを飲む。たいへんによく出来たエスプレッ…
底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 1989年
前の作品へ
次の作品へ