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リタ・ヘイワースの足もと

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 リタ・ヘイワースがデビューしたのは一九三十年代のことだと思う。女優としての代表作、あるいは彼女の存在を決定づけた作品は、一九四六年の『ギルダ』だ。今回の写真のなかに、彼女の素晴らしい立ち姿の、上半身写真がある。僕がつけている見当では、これは『ギルダ』の宣伝用に撮影されたパブリシティ写真だ。

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 ハリウッドの歴史を支えてきた何本もの柱の、ひときわ太い一本は、セックス・シンボルと呼ばれた女優たちだ。リタ・ヘイワースもごく簡単に言うなら、そのようなセックス・シンボルのひとりだった。

 もともとはダンサーだったという。そのせいだろう、そして女優としての天賦の才能も充分にあったからだろう、彼女の体の動きかたは、スクリーンに投影されるとたいへんに魅力があった。ふとなにげなく動いているように見えて、じつは常に完璧に正確な、いっさい無理のない、きわめて滑らかな動きを、彼女の体のあらゆる部分がこなしていた。

 僕が彼女をスクリーンで見たのは、一九五十年代のなかばあたりだ。病気をして活動を休んでいたあと、復帰してすぐに主演したのが、『ミス・サディ・トンプスン』だった。彼女が踊る足もとの写真は、その映画のもっとも有名な場面のスティルを、僕が本からトリミング複写したものだ。

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 この作品のさらにあと、セクシーな残り香はまだ充分にあるものの、容色の衰えは確実に始まっていた時期の彼女が、僕の記憶するリタ・ヘイワースだ。心ここにあらずというか、気持ちの乗っていない、どこかけだるく物憂い、それでいて動きの完璧な彼女は、現実にはただつらいだけだったのかもしれない、といま僕は思う。

出典:『Free&Easy』2000年7月


2017年12月6日 00:00