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評論・エッセイ

彼女が愛する小さなデスク

 彼女の自宅にある仕事部屋は彼女が作った。ただの空間でしかなかったところに手を加え、工夫をこらして、作り上げた。凝ってはいないし、加工や装飾は最小限におさえてあった。したがって改造のための資金も、自分でも驚くほどに少なくてすんだ。だが、出来ばえはたいへんなものだった。彼女の才能の一端が、その仕事部屋の出来ばえのなかに、美しく発揮されていた。
 廊下からドアを入ると、仕事部屋の空間ぜんたいをそこから見渡すことが出来た。ひとつの広いスペースは、工夫の結果によるおだやかな方法で、ふたつに区切ってあった。
 手前の…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年

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