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評論・エッセイ

『ときには星の下で眠る』

 一九八〇年までさかのぼると、『ときには星の下で眠る』という、中編よりやや分量の多い小説がある。高校の同級生だった親しいオートバイ仲間が、ある年の秋、高原に集まって来て再会する、という単純なストーリーだということは記憶している。再会の物語には、過去と現在というふたとおりの時間のほかにもうひとつ、過去と現在のあいだですでに経過し去ったにもかかわらず、過去と現在をいまも結びつけている時間が、必要だ。過去と現在とを結びつけている時間とは、要するにあのときから現在までのあいだに、親しい仲間たちのそれぞれが体験して来た人生のエピソードだ。エピソ…

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