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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

いつかどこかで

いつかどこかで



 あるひとつの光景を目にして、これとおなじ光景をいつかどこかで見たことがある、と思う心理的な働きぜんたいを指して、既視感と呼んでいる。光景ではなく状況でもいい。過去のどこかでおなじような光景や状況を本当に体験していて、その体験が記憶の底にしまいこまれ、なにかをきっかけにしてそれが部分的によみがえると、そこに既視感というものが生まれるのかもしれない。体験はしていないのだが、いつかどこかで見たことがある、とそのときその場で勝手に思い込んだがゆえに発生する既視感だって、け…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

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