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冬のハーモサ・ビーチ、六フィートの波|彼らはなぜ海へ来るのかー6

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 ハーモサ・ビーチの海底は、平坦なサンド・ボトムだ。海底のかたちは、いつも変化している。だから、波乗りのための波も、いろんなタイプの波になる。ビーチ・ブレイクのサーフは毎日のように変化し、今日の波がどんな波になるか、そして明日のサーフがどのようなできぐあいとなるか、予測はつけがたい。クローズ・アウトのダンパーになったかと思うと、ピアの前を美しくピールしつつ駆けぬけていく六フィートのシリンダーになってみたりする。

 こんなふうに、かなり限定されたエリアのなかで、サンド・ボトムの海底がさまざまな波をつくり出すから、ハーモサ・ビーチのサーファーたちはそのいろんな波に充分に対応できるための技量を身につけないと、ハーモサ・ビーチのビーチ・ブレイクを楽しむことができない。

 「ハーモサ・ビーチ出身のサーファーに、個性ゆたかな一流のサーファーが多いのはそのせいだよ、きっと」

 と自分もハーモサ・ビーチ出身の一流のサーファーになろうとしている青年が、何年かまえの夏、語ってくれた。

「うねりがおなじようにつづけて入って来ているときでも、昨日と今日とでは、できるサーフがまったくちがうんだ。だから、どんな波からでも、その波のポテンシャルをフルにひっぱり出すことのできる才能が、いつのまにか育っていくのさ」

 ハーモサ・ビーチの波は、やはり冬がいい。冬の嵐が去ったあと、まだ入ってくるうねりが軽いオフ・ショアの風をうけて三フィートから六フィートのサーフになるとき、ハーモサ・ビーチはもっとも美しい。海底がフラットなサンド・ボトムだけあって、昨日と今日とではテイク・オフするピークの位置が五十フィートもちがっていたりする。

 夏のハーモサには、バハ・カリフォルニアの沖からのうねりを受けとめるとき、三フィートほどのサーフができる。南太平洋からのサウス・スウェルは、パロス・ヴァーデス半島やカタリナ・アイランドによってさえぎられてしまうことが多い。

 「夏のハーモサ・ビーチは、若く美しい女性と、彼女たちが身につけるスイム・スーツの見本市だよ」

 と、ハーモサ・ビーチのまたべつの若いサーファーが、言っていた。

 「女性のスイム・スーツは、人間の体という限定された立体のカンヴァスのうえに、いかにヴァラエティゆたかに美しさをつくり出すかの、アイディアの勝負だからね。そして、ありとあらゆるアイディアと美しさの水着を見ることができるのが、このハーモサなんだ」

 と、彼は言っていた。そして彼は、次のように説明をつけ加えてくれた。

「女性が身につけているスイム・スーツのさまざまなアイディアに刺激されたサーファーが、こんどは波を相手にライディングのアイディアを競うので、結果としてハーモサにはいいサーファーが多くなるのさ」

(『個人的な雑誌2』1988年所収)


▶︎ 今日のリンク |161125| 編集部ブログ| 今日は口数がおおい(その1)|11月電子化作品から|八巻美恵
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片岡義男がハワイ4部作という作品のひとつ『頬よせてホノルル』収録の5作品など、11月の電子化作品について。

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1988年 『個人的な雑誌2』 アメリカ カリフォルニア サーファー サーフィン ハーモサ・ビーチ
2016年12月7日 05:30
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