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オートポイントというアメリ力らしさ

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 アメリカ製の文房具が少ないなかで、オートポイントとの再会はうれしいものだった。オートポイントのシャープペンシルのことを、僕は長いあいだすっかり忘れていた。オートポイント。じつに懐かしい名前だ。鉛筆、芯ホルダー、シャープペンシルなどを使って原稿を書いていた頃、いちばん活躍してくれたのは、オートポイントだったかもしれない。

 まず最初に一本、見つけた。「オール・アメリカン。オートポイント。メイド・イン・アメリカ。0・9ミリ黒芯ペンシル。もっとも簡単な構造でもっとも信頼のできるペンシル」などとパッケージにうたってある。僕が見つけたのは、軸が黒い色のものだった。

 それから日を置かずして、おなじ型番10030の、ダーク・ブルーの軸を、0・9ミリの黒い替え芯とともに、僕は手に入れた。それからふたたび日を置かずして、双頭のオートポイントとめぐり会った。これも僕はかつて愛用していた。双頭とは、両端がおなじかたちをしていて、いっぽうは黒い芯、そしてもういっぽうは赤い芯、という意味だ。赤い芯のほうは、金属製の先端からすぐ上の部分が、赤いプラスティックになっている。替え芯も手に入った。赤もおなじく0・9ミリだ。

 しっかりした書きやすさは、芯の出来ばえとともに、先端の口金の部分にほどこしてある、ほんのちょっとした工夫のおかげだろう。口金の先端はふたつに割れていて、その内径は0・9ミリよりおそらくほんの少しだけ細いのだ。そこをプランジャーの針金でうしろから押されて、芯が出て来る。ふたつに割れた口金を押し広げながら、芯は出て来る。押し広げれば押し返される道理で、芯はふたつに割れた口金でしっかりとくわえられ、シャープペンシルにありがちなぐらつきがいっさいない。

 内部の機構はパッケージにあるとおりじつに簡単なものだが、創意とはこのことかと思うほどの、見事な工夫だ。

 芯の入っている細い管のなかを、プランジャーと呼ばれている針金が芯を押していく。軸を回転させるとプランジャーも回転するしかけになっていて、プランジャーの針金は途中でひねられたような小さな突起を持ち、この突起が芯の通る管の内壁に刻まれた螺旋を、軸の回転に合わせてたどっていく。パッケージにオール・アメリカンとあるとおり、アメリカらしさそのものだ。替え芯の長さが三十五ミリというのも、アメリカらしさのうちだろう。

(2016年11月9日掲載『なにを買ったの? 文房具』2009年所収)

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2009年 『なにを買ったの? 文房具』 アメリカ オートポイント 文房具 書く
2016年11月9日 05:30
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