365日、毎日更新 今を映す手鏡のように
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2017.5.30
彼の後輪が滑った──(9)
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 峠道を登りつくし、道路が平坦になったところで、ぼくは転倒した。見ている人は、いなかった。ほかにオートバイも自動車も、いなかった。ぼくは、いつも、ひとりで転倒する。記憶しているほとんどの場合、転倒するのはひとりのときだ。…
2017.5.29
ロッキング・チェア
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 アメリカの中西部、人口が一〇〇〇名に満たない小さな田舎町の町はずれに、その家はあった。大平原地帯のまんなかにあるこのような小さな町の町はずれは、ようするにすでに大平原なのだ。見渡すかぎり大平原しかなく、たとえば外国から…
2017.5.28
オカズヤのオイナリサン
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 稲荷ずしは子供の頃からよく知っている。好きな食べ物のひとつだ。スティームド・ライスを食する方法として、たいそう好ましいではないか。しかし、子供の頃からずっと、出来不出来はあるにしても、稲荷ずしはどれもみな稲荷ずしでしか…
2017.5.27
トマト、胡瓜、豆ご飯、薩摩芋
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 自分のところの畑の一角には夏にはトマトが実った。海へいく途中でその畑の近くをとおるなら、寄り道をしてそこへいき、トマトを三つ四つもいで海へ持っていった。熟れる前の緑色の不思議な球体が、半分以上は赤くなっているトマトだっ…
2017.5.26
ほろりと泣いて正解
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 もう何年かまえのことになるが、季節はちょうどいまごろだった。  よく晴れた明るい日の夕方、ぼくは、当時ひとりで住んでいた家の玄関ポーチのデッキ・チェアにすわり、楽譜を読んでいた。アメリカの、一九三〇年代、四〇年代に流行…
2017.5.22
『スローなブギにしてくれ』
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 角川文庫から出た僕の作品の、最初から数えて四作めに、『スローなブギにしてくれ』というのがある。一九七九年に文庫で出た。それ以前に『野性時代』に書いた五つの短編が収録してある。表題作はそのうちのひとつだ。まず最初にこれも…
2017.5.21
『彼のオートバイ、彼女の島』
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 これが文庫本になったのは一九八〇年のことだ。それ以前に単行本で出ていた時期が、三年はあったのではないか。そしてそれは『野性時代』に連載したものだ。とすると、書いたのは一九七五、六年だったということになる。単行本で出たと…
2017.5.20
『ときには星の下で眠る』
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 一九八〇年までさかのぼると、『ときには星の下で眠る』という、中編よりやや分量の多い小説がある。高校の同級生だった親しいオートバイ仲間が、ある年の秋、高原に集まって来て再会する、という単純なストーリーだということは記憶し…
2017.5.19
『幸せは白いTシャツ』
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 一九九四年の夏に出た『狙撃者がいる』が、いまのところ僕にとってもっとも新しい角川文庫だ。そこから『湾岸道路』までさかのぼるあいだに、五十七冊の文庫がならんでいる。そして『湾岸道路』からいちばん最初の角川文庫である、『ぼ…
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