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片岡義男.com 全著作電子化計画

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小説

ジラレナイシン

見た目にも内実にも特徴のある小道具で、登場人物の性格描写と画面映えを両立させるテクニックが見事です。

 立花エリカは、今日もまた、一人暮らしの集合住宅から歩いて五分ほどの喫茶店「明日香」で、深煎りのエチオピアを飲みます。曜日も時間も関係なく訪れる彼女に興味を持った店主の桐野明日香に話しかけられたことから、二十歳になったばかりでコミックス作家志望のエリカの生活は大きく動き出します。エリカが歩く道や、彼女の服装、明日香の服装や容貌、店内の様子まで克明に描写されているのは、この短編小説がコミックス的な表現で小説を書くというスタイルをとっているからでしょう。エリカが取り出すペンが、プロ仕様ながらかなり癖の強い、しかしスタイリッシュなロットリン…

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