VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

東京オムライスめぐり

 オムライスを一度だけ食べた記憶がある。昭和二十一年、あるいは二十二年、絵に描いたようなただの子供だった僕は、百貨店の食堂のようなところで、オムライスをスプーンで食べた。スプーンが僕の口には大きすぎたことが、オムライス記憶の背景となっている。それから旗だ。小さな旗を貼りつけた楊枝が、オムライスの楕円形の山の頂上に刺してあった。ユニオン・ジャックのような、見栄えのする旗だった。
 僕の想像でオムライスを作ると、ケチャップをまぶして炒めたご飯にグリーン・ピーズをかすかに散らしたかのように混ぜ、卵を薄く焼いたものであるという前…

このエントリーをはてなブックマークに追加