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エッセイ

消すことによって生まれる新たな可能性

 書き間違えた文字や図形を消し去る道具が消しゴムである、という考えかたは消極のきわみであり、それゆえに、不毛をもきわめている。そしてその不毛は経過していく時間のなかでさまざまに連鎖し、遠からずや人生の不幸の始まりを作る。
 消しゴムは、じつは、まったく新たな可能性、というものの権化なのだ。いったんは紙の上に書きとめられた文字や図形が、正しくない試みであることに気づいた人は、それらを消しゴムで消し去り、新たな試みを書きとめ直す。正しくないものを、いまだ不充分なものなどを、消し去ることによって、そこにより正しい試みへの道を、…

底本:『なにを買ったの? 文房具。』東京書籍 2009年

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