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評論・エッセイ

ホノルル・ブックストアへ歩くまでに

 リチャード・ブローティガンという作家の『アメリカの鱒釣り』について、その本を実際に自分で手に入れる以前に、なんらかの情報源をとおして、多少は知っていた。まったく面白い作品であるとか、素晴らしい試みであるとか、あるいは、タイトルからするとフィッシングの本であるかのような印象をうけるが、現実にはそうではないといった、評価ないしは情報の断片を、ぼくはすでに持っていた。
 だから、ホノルル・ブックストアのダウンタウンにある店で現物を見たときは、まず最初に、あ、これなのか! という感じで、良きめぐりあいの瞬間の、うれしい感銘があ…

底本:『コーヒーもう一杯』角川文庫 1980年

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